インタビュー Vol.7 学生だからできる難民支援 「J-FUN ユース」 代表 酒師麻里さん

©UNHCR

難民支援活動を行っている学生団体J-FUNユース。第9期の代表を務める東京女子大学2年生の酒師麻里さんに普段の活動について、どんな思いで活動をしているのかを伺いました。

 

学生にもできる難民支援・学生だからできる難民支援

―J-FUN ユースの活動について具体的に教えてください。

J-FUN ユースの活動は2007年6月20日世界難民の日に「UNHCRユース」という名称で発足しました。難民問題や人道支援に対する学生の関心の高まりと学生らしさを難民支援の現場に生かしたいという想いから結成されました。そして2009年6月に新たに「J-FUN ユース」と名称を変え再スタートを切りました。

J-FUN ユースが目指すことは大きく分けて2つあります。1つは「難民を取り巻く社会の状況を良くする事」。そしてもう1つは「将来社会で活躍する人々の学びの場となる」ことです。 現在所属しているメンバーは20人ほど。大学生が中心ですが、高校生が参加することもあります。具体的な活動は主に4つあります。

①難民や避難民、無国籍者に関する勉強会「ユースデー」

J-FUN ユースのメンバーは熱心かつアクティブで、難民問題をはじめとし、さまざまな社会問題に関する勉強を月2回行っています。

©UNHCR

②日本で生活している難民の子ども対象の「学習教室」

毎週土曜日、日本の学校に通う難民2世の子どもたちを対象に学習教室を行っています。学習でわからないところなどをユースのメンバーが補完しています。

③「世界難民の日」に向けたイベントの企画、運営

毎年6月20日「世界難民の日」には様々なイベントを企画しています。

(写真:2015年「世界難民の日」のイベントBLUE JACK)©UNHCR

④SNSなどで情報発信「時事deなんみん」

J-FUN ユースのメンバーが気になったニュースをフェイスブックなどで発信しています。メンバーが気になったニュースをFacebookでシェアし、通学時間などちょっとした空き時間で学生に難民問題に普段から触れてもらおうというプロジェクトです。

J-FUNユースのフェイスブックはこちら »

現在の事務局は、私たちで第9期となります。第9期のコンセプトは、「J-FUN ユース~学生にもできる難民支援・学生だからできる難民支援~」に、『つなぐ』という言葉を付け加えました。これは私たちJ-FUN ユースがいることで、難民、学生、社会の全てが繋がりを持ち、今ままで存在しなかった関係が生まれ、難民問題がより多くの人に知ってもらえるようになりたいという思いから、9期の事務局のメンバーで考えました。

―酒師さんがJ-FUN ユースに入ろうと思われたきっかけは?

友人が難民2世の子どもたちの学習教室へ行くのに一緒について行きました。その時に初めて、ニュースで聞いていた難民と呼ばれる人が日本にいることを知りました。「なぜ自分は今まで日本に難民がいることを知らなかったのか」と思うと同時に、もっと知りたい、日本にいる難民の方にできることをしてみたい、と思うようになりました。これがJ-FUN ユースに入ったきっかけです。

 

私に心を開いてくれていると感じたときはとても嬉しい

―実際に参加して嬉しかったことは?

活動していて一番嬉しかったことは、学習教室に通う中学生の1人に「今日はありがとう。勉強楽しかった。わからないところ、わかったよ。」と帰り際に言われたことです。もともとその子は、他の子と違い少し人見知りをするところがあったり、私自身教えていて「自分の教え方が分かりにくいのはではないか」「彼女が理解できていなかったらどうしよう」と不安に思うことがありました。でも、その言葉を聞いて、ほっとしましたし、嬉しくて仕方なかったです。

また学習教室は勉強するだけではなく、子どもたちの学校での様子などの生活面の話もする場となっています。「先生にだけ教えてあげる」と言って中学生の女の子が秘密の話をしてくれたり、私に心を開いてくれていると感じた時も、とても嬉しかったです。

学習教室の様子 ©UNHCR

―活動に参加して驚いたことは?

活動を始めた頃に一番驚いたことはJ-FUNユースのメンバーの、難民問題に対する姿勢です。特にそれを感じたのが月に2回行われるユースデイという全体ミーティングを兼ねた勉強会のときでした。ユースデイでは資料を用意するのですが、毎回準備の過程で事細かく調べ、難民に関する知識を増やしていこうとするメンバーの姿勢には今でも驚かされます。難民問題に取り組み、啓発をしていく立場にある私たちには勉強は欠かせないという強い思いが、メンバーそれぞれの中にあるからこそだと思います。私自身、まだまだ勉強が足りていないと感じているので、文献を読んだり、少なくとも毎日難民に関するニュースなどにも目を通すようにしています。

 

知識を吸収する柔軟性と行動力

―学生ならではの強みは何だと思いますか?

枠にとらわれないことだと思います。社会人に比べ、学ぶ時間が大いにある学生は、さまざまな知識を吸収する柔軟性があります。また時間がある学生には行動力があります。難民問題とリンクした分野を勉強しながら、行動に起こす。ある意味「何でもできてしまう」というのが学生の強みだと思います。

―学生が難民問題に取り組むことの意義は何だと思いますか?

学生が難民問題に取り組む意義は、さまざまな学生が、自分の吸収した知識から意見を交換し合い、難民問題に対し新たな取り組みができることにあると考えます。メンバーそれぞれが、自分なりの難民問題との関わり方を探し、共有し、お互いが刺激し合えればと思います。

―J-FUN ユースとしての今後の課題

J-FUN ユースは様々な大学のメンバーが集まって構成される、いわばインカレサークルです。日によっては会えないメンバーもいるので、メンバー同士の交流もより多くの頻度で行っていかなくてはと感じています。そこで今後は、OB・OGの先輩も集まって交流会を行う予定です。歴代のメンバーが集い、これまでの活動や今後の難民問題への取り組み方なども積極的に話し合いたいと思います。

また、衣料品回収である全商品リサイクル運動を多くの大学で実施できるようにしたいと考えています。2015年は4大学のみの実施だったので、難民問題を知らない学生への啓発も兼ねてこの活動は広めていきたいと考えています。インカレサークルという強みを活かし、実施大学を増やしていきたいです。

大学で衣料品のリサイクル活動を行うJ-FUN ユースのメンバー ©UNHCR

―酒師さんが今後挑戦してみたいことは何ですか?

今後も難民支援にもっと関わっていきたいと考えています。支援といっても、学ばさせていただくことばかりですが・・・。その1つの活動として日本で難民問題に取り組む学生団体のプラットフォームを作りたいと考えています。

―記事を読んでいる人へのメッセージ

難民問題と聞くと、どこから手をつけていいかわからなくなってしまうかもしれません。でも、難民問題への取り組み方は意外と身近なところにあるのではと思います。難民に関するニュースを友人とシェアするのも、難民のことを広める活動のひとつです。自分ができる範囲でアクションを起こすことによって、遠いところで起きている難民問題がぐっと身近に感じるかもれません。学生である私たちには時間があります。その特権を生かし、自由に学び、行動を起こしてもらえたらと思います。もし難民問題に関心があったら、J-FUN ユースの活動に参加してみるのも行動を起こすことの一つになるかもしれません。

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©UNHCR

取材日:2015年12月

 

プロフィール

酒師 麻里(さかし まり)
東京女子大学国際社会学科在学中。偶然、日本で暮らす難民と出会ったことをきっかけに、難民問題に関心を持ちJ-FUNユースに加盟。難民問題を学生をはじめ、幅広い年代に知ってもらうために活動している。