【アフリカ特集】 職員インタビュー:モーリタニア ムベラ難民キャンプからの報告

©UNHCR

 

上野 隆之 UNHCRモーリタニア事務所 保護官

 

私がアフリカ西部のモーリタニアの難民支援活動に携わり始めたのは去年の8月だ。常駐先はムベラ難民キャンプから遠く離れ、大西洋に面した首都のヌアクショットである。仕事内容は、主に首都レベルでモーリタニア政府機関や他の人道支援機関と保護活動の調整を行っている。

マリ北部で2012年の初めに勃発したトゥアレグ族反政府勢力とマリ政府軍との衝突がもとで現在約26万人がマリ国内に避難、周辺国には17万人以上が難民として避難している。UNHCRモーリタニアが活動を展開するムベラ難民キャンプには、現在約7万5000人の難民がいる。世帯主はマリに残り、女性や子どもが大半を占めている。

ムベラ難民キャンプはマリ国境から50キロ離れた砂漠地帯にあるが、トラックやロバ、中には徒歩で越境する難民もいる。まずは国境から3キロ離れた村で第一次登録を行うが、登録中に移動の疲労で母親やお年寄りが倒れ込む光景は稀ではない。ムベラ難民キャンプは乳幼児や老人には厳しい環境だ。灼熱の暑さ、風雨、砂嵐に耐えなければならず、呼吸器感染症や下痢などの病気にかかりやすい。国際機関、国際NGOや現地NGOが力を合わせ支援を行っているが、幼児の栄養失調、資金不足で初等教育を受けられない子どもたちなど毎日難題に直面している。

©UNHCR/Nadjikouman Sangtam

ムベラ難民キャンプの子どもたち

 

困難な事は多いが、モーリタニアにおいてのマリ難民保護の政策・戦略の作成を任されている事にやりがいを感じている。自分が手掛けた戦略を通して難民がより意思決定に参加したり、児童保護、教育、性的暴力への対応、同伴者のいない幼児の保護等の事項が促進するのだ。

私は、難民キャンプで体を張って勤務している同僚の応援に毎月一回は足を運び、視察するようにしている。難民の声を直接聞くことによって、より現実味のある政策になる。受益者により近いフィールドに赴けば、※JPO としてこの仕事をはじめたばかりの頃の気持ちをよみがえらせてくれる。

また難民と接していると人間のはかなさを目の当たりにするが、一方で人間の想像力や生命力を実感させてくれる。そして、何といっても、彼らから笑顔をもらうと一日の疲れが一気にぬぐわれ、翌日の原動力となるのだ。

 ©UNHCR/ Nadjikouman Sangtam

ムベラ難民キャンプへ移動するために待機するマリ難民の家族

 

※JPO派遣制度とは、将来的に国際機関で正規職員として勤務することを志望する若手邦人を対象に、日本政府が派遣に係る経費を負担する制度である。一定期間各国際機関で職員として勤務し、国際機関の正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供する。

(2013年4月17日)