アンジェリーナ・ジョリー UNHCR特使の活動

2012年、ヨルダンのザータリ難民キャンプにて ©UNHCR/ J.Tanner

 

女優アンジェリーナ・ジョリー

アンジェリーナ・ジョリーは、1975年アメリカに生まれました。 幼い頃からよく母と一緒に映画を観に行ったことがことがきっかけで、ジョリーは演技に興味を持つようになりました。1998年のテレビ映画『ジーア/悲劇のスーパーモデル』で演じたジーア役が高く評価され、ゴールデングローブ賞を含めて多くの賞を受賞しました。

さらに翌年、映画『17歳のカルテ』で再びゴールデングローブ賞を受賞。その後は演技派女優としてのキャリアを開花させて行きました。現在、女優としての高い知名度を誇り、その演技力と人間的な魅力で多くのファンを魅了しています。

 

難民問題に関わるきっかけ

女優としての活躍のほか、長年難民問題や平和構築の問題にも力を注いできました。

そのきっかけとなったのは、アドベンチャー・アクション映画「トゥームレイダー」への出演でした。2000年、映画撮影のためカンボジアを訪れました。短い期間でしたが、現地の美しい大自然や住民たちの優しく素直な性格に感動したと言います。

そして、未だに地雷が爆発するかもしれない危険の中で子どもたちが生きているという事実にショックを受け、自分に何か出来ることはないかと考え、帰国してすぐにUNHCRに自分自身で連絡をしたのです。

これを機に、アンジェリーナ・ジョリーは慣れ親しんだショービズ界とは全く別世界の難民支援に携わるようになりました。そして、この活動を自分の慈善心を見せるパフォーマンスとしてではなく、人生のキャリアの一つとして力を注ぎ始めたのです。

シリア難民の女性の話に聞き入る。ヨルダンのザータリ難民キャンプにて(2012)  ©UNHCR/ J.Tanner

 

UNHCR親善大使としての活躍

アンジェリーナ・ジョリーは2001年にUNHCRの親善大使に任命された後、シエラレオネ、カンボジア、パキスタンを視察のために訪れ、翌年さらにナミビア、タイ、エクアドル、ケニア、コソボの5つの国と地域にも訪問しました。 親善大使として人道支援活動の現場をただ通り過ぎるのではなく、ありのままの現実を自分の目で見て、そして現地の人々の声に耳を傾けました。そして訪問を通して感動し、驚き、また悲しく感じたこと全てを日記に残しそれを出版して(原題:Notes from My Travels: Visits with Refugees in Africa, Cambodia, Pakistan and Ecuador)その売り上げを全てUNHCRに寄付しました。

2009年ケニアのダダーブ難民キャンプにて  ©UNHCR/ B. Heger

 精力的な支援活動

その後も人道支援の現場へ40回以上赴き、難民・避難民となった何百万人もの人々の苦しみを伝え、保護を訴えてきました。彼女の訪れた場所の中には、シリア、イラク、パキスタン、ヨルダン、アフガニスタンなど命の危険を伴うような場所も含まれています。支援現場では女優としての自分を忘れ、出来る限り難民の声に耳を傾け、その現状とニーズを把握しようとしました。

2011年、アフガニスタンのカブールにて女子学生たちと  ©UNHCR/ J. Tanner

長期的視野での支援-外交、寄付、組織の立ち上げ

現場視察に加え、国際的な外交の場でも、世界中の難民問題への意識向上を呼びかけてきました。同時に寄付という形でも貢献しており、2001年からこれまでに総額500万米ドルをUNHCRに寄付しました。また難民への一時的支援だけでなく、長期的且つ根本的解決策にも関心を寄せてきました。 2003年には養子マドックス君の名を取った基金プロジェクト「マドックス・ジョリー・ピット基金プロジェクト(Maddox Jolie-Pitt Foundation project)」を立ち上げ、2005年には「難民と移民の子どもたちのためのセンター(National Centre for Refugee and Immigrant Children)」と「弁護を必要とする子どもたちのための組織(Kids in Need of Defence)」を立ち上げ、開発、教育、医療、法律など様々な分野で支援を提供してきました。

 

UNHCRの特使へ

親善大使に任命された11年後の2012年、UNHCR特使に任命されました。今後は特使という新たな立場で、特に難民が多く出る大規模災害への支援や、外交レベルにおいて難民問題解決へ向けた行動が期待されています。

 

初監督作品『最愛の大地』

2013年、『最愛の大地』のポスターの前で  ©UNHCR/ C. Imaizumi

2010年ボスニア・ヘルツェゴビナを訪問した時に着想を得て、自ら脚本を執筆・監督をした映画『最愛の大地』を発表しました。

この作品は1990年代のボスニア紛争を背景に一組の男女の悲劇の愛を描いており、「紛争下における性暴力撲滅」への強い思いが込められています。このボスニア紛争を背景とした作品は高く評価され、多数の映画賞を受賞しただけでなく、戦争や難民問題を映像の形で多くの人に伝えることに大きな役割を果たしました。

ハリウッド女優とUNHCR特使、彼女にとってこの二つの仕事は、互いに相乗効果を生んでいるといいます。女優としての知名度や影響力を、より多くの人たちを助けるために活用したいと彼女は願っています。

シリア難民の子どもたちによるキャンプ案内 (2012)  ©UNHCR/ O.Laban-Mattei

人道支援、平和構築の分野でたゆまぬ貢献をし続ける活躍から今後も目が離せません。

Reference: UNHCR “Angelina Jolie”