【職員インタビュー】小宮理奈UNHCRアンマン事務所 准保護官

©UNHCR/Arisa Yoneyama

小宮理奈UNHCRアンマン事務所 准保護官

ヨルダンでの仕事内容を教えてください

2017年8月にアンマン事務所に着任し、政府関係者へのキャパシティビルディングと政策提言(アドボカシー)、都市難民へのアウトリーチ、レポーティングを行っています。ヨルダンには65万5000人以上のシリア難民がおり、そのうち80%がアンマンやアカバ、カラック、ザルカなどの都市で暮らしています。私たちは各都市を訪問し、登録状況の確認や法的アドバイスの提供、ほかの機関への照会などを行っています。

また、ヨルダンには、イラク、イエメン、スーダン、ソマリアなどの出身の難民が7万8000人ほど居住しており、彼らへの法的相談も実施しています。

シリア難民の問題に対してどのような進展がありますか?

シリアはまだ不安定であるため、UNHCRとしては、シリアへの帰還はまだ時期尚早と考え、帰還は推奨していません。2017年にはシリアに8037人が帰還しましたが、これは登録済みのシリア難民の人口の2%のみにしか当たりません。

本国への帰還が難しいので、シリア難民はヨルダンにて安定した生活を営む必要があります。労働に関しては、2016年2月のドナー会合と2017年のブリュッセルでの国際会議を経て、シリア難民への就労がより簡単になりました。現在までに計6万件の就労許可が発行され、シリア難民の労働の機会は拡大しています。主な就労許可のカテゴリーは、農業、建築、サービス、工場です。また、教育に関しては、ヨルダンではすべての難民の子どもが無料で教育を受けられます。

さらに、ヨルダンには難民向けのコミュニティセンターが25ヶ所にあります。17ヶ所がシリア難民、6ヶ所がイラク難民、1ヶ所がスーダン難民、1ヶ所がソマリア難民向けです。コミュニティセンターはボランティアによって運営されており、受け入れコミュニティの住民と難民が一緒にイベントを実施したり、文化交流の場になっています。コミュニティセンターでは計200人のメンバーが活動しています。

ヨルダンでの定住以外に、考えられる解決策が第三国定住です。2015年には5万6000人、2016年には2万1000人の難民がヨルダンからアメリカやカナダに受け入れられました。UNHCRのヨルダン事務所は難民の登録、必要な支援のレベル確認、データベースから候補者のスクリーニング、面接の実施、第三国定住受け入れ国への推薦などを担っています。

アズラック難民キャンプ、ザータリ難民キャンプ、都市部、それぞれの難民の状況にはどのような違いがありますか?

早い時期に開設されたザータリ難民キャンプには、現在8万人の難民が身を寄せ、キャンプ内は活気に溢れています。3万5000人が避難生活を送るアズラック難民キャンプは比較的新しいキャンプで、ザータリ難民キャンプで学んだ教訓を活かした作られました。

一方、ヨルダンにいるシリア難民の大半が都市難民で、そのうち80%が貧困ライン(1ヶ月1万円)を下回る生活を送っています。UNHCRはそうした家庭に現金給付を通じて支援を行っていますが、資金が限られているためすべての家庭にはそうした支援が実施できていません。日本政府はシリア紛争が始まってから継続的にUNHCRのヨルダンでの活動に支援をしており、その中でも特に現金給付の分野に力を入れています。

ヨルダンで仕事をしていて記憶に残っている言葉はありますか?

私は中東地域の理解を深めるためにアラビア語とイスラームを学んでいるのですが、ある日同僚が「ハセナット」という言葉を教えてくれました。正しい行い、善行、徳という意味です。このハセナットを積み重ねていけば、その後自分たちに戻ってくるという考えがあり、同僚たちはいつもどのようにハセナットを積み重ねるかについて話しています。この考え方は難民や受け入れコミュニティの住民の間でも共有されており、人々は寛容です。

モチベーションはなんですか?

人々に対して好奇心を持ち続け、学ぶ姿勢でいることです。人々のバックグラウンドを知り、自分に何ができるかを考える。積極的な姿勢が重要だと思います。難民の人々には活気があり、私は会話を通じて刺激を受け、元気をもらえています。

岐路に立った時どのようなことを思い出しますか。また将来の目標を教えてください。

悩んだときにはいつも自分が信じる原点に立ち戻り、自分たちの支援が難民のためになっているかを考えます。

難民保護は国際法の中でも継続的に発展している分野です。私はこの挑戦的な分野の国際協力にこれかも携わっていきたいと思っています。また、難民保護は、私たちのアイデンティティにも深く関わっており、人間として私たちは異なるバックグラウンドの人々をどの受け入れるのかという問いでもあります。そういう意味では、難民というのは私たちや私たちの社会を映し出す鏡でもあります。私たちはどういう人間でありたいのか、どのような社会にしていきたいのか。私は、すべての人々が尊重され、バックグラウンドに関わらず尊厳をもって接せられるような社会の創造に今後も貢献していきたいと考えています。

©UNHCR/Arisa Yoneyama

プロフィール

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)修士課程修了。UNICEFウガンダ事務所や国際NGO(ケニア)、国連UNHCR協会を経て、UNHCRカスル事務所(タンザニア)で難民保護に従事。2017年8月よりUNHCRアンマン事務所(ヨルダン)で准保護官(日本政府によるJPO派遣)として勤務。

(2017年11月23日)