レポート:フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官公開講演「難民の国際保護と私たちにできること~教育の役割~」/国連キャリアセミナー

2017年11月19日(日)、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官公開講演「難民の国際保護と私たちにできること~教育の役割~」と国連キャリアセミナーが、UNHCR駐日事務所、国連UNHCR協会、外務省、UNHCR難民高等教育事業(Refugee Higher Education Program: RHEP)パートナー大学※の共催で、上智大学で開催されました。

※関西学院大学、青山学院大学、明治大学、津田塾大学、創価大学、上智大学、明治学院大学、聖心女子大学

開会の挨拶で上智大学の曄道佳明学長は、これからは国内外における難民問題をいかに身近な課題と考えられるかが重要であるとし、より多くの人々が共通の認識をもって議論を拡大していくことが大切であり、そのためにもこのイベントは大変意義があると述べました。

第一部のグランディ国連難民高等弁務官の講演では、世界では6,600万人以上もの人々が、紛争や迫害のために国を追われていること、紛争が長期化することで、数年、数十年という長い期間、避難生活を送ることを余儀なくされている人が多くいるという現実を共有しました。また国境を超える人々のうち約80%が近隣の開発途上国や中進国に逃れていること、これらの多くの国々が国境を閉鎖することなく、難民への支援を行っていることに触れ、難民問題解決は国際的な責任であり、日本をはじめとする先進国の関わりの必要性を訴えました。

また、世界の難民のうち半数以上が18歳未満の子どもであることから、避難先の社会に統合し、子どもたちが祖国や逃れた先で将来大きな役割を担うために、教育は必要不可欠であると述べました。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の目標4では「質の高い教育をみんなに」と掲げていること、人道支援と開発支援を有機的につなげていくことの重要さとあわせて、日本がこの分野に力を入れていることにも言及しました。

その例として、UNHCR駐日事務所、国連UNHCR協会、パートナー大学により実施されているRHEPや日本政府によるシリア人留学生150人の受け入れなどに触れ、今後これらの事業が拡大していくこと、そのために、これまで以上に大学や市民社会が中心となり、互いに協力しながら支援に関わっていくことへの期待を表明しました。また、講演に参加している学生に対しては、ぜひ難民の声に耳を傾け、理解し、寄り添い、サポートするような経験を積んでほしいと述べました。

グランディ高等弁務官は、ウガンダのソマリア難民の少女が発した「私たちは一生涯難民ではありません。私たちこそが将来のリーダーであり、教育は何より重要なのです」というメッセージを共有して、講演を締めくくりました。

続いて行われたRHEP卒業生によるディスカッションでは、チャンさん(2015年関西学院大学卒業)、シャンカイさん(2016年関西学院大学卒業)、ジャファールさん(2016年明治大学卒業)が登壇しました。

ベトナムを逃れ、日本で起業家として活躍するチャンさんは、2度目の挑戦でRHEPに合格、大学ではゼミの先生に恵まれ非常に充実した大学生活を過ごしたこと、現在はビジネスを通して、平和が訪れたベトナムと日本の懸け橋となっていることについて話しました。両親がミャンマーから日本に逃れ、東京で生まれ育ったシャンカイさんは、中学生の時に外国人であることを理由にいじめを受けるまで、自身が難民であることを意識したことはなかったと言います。そこで、勉強ができると一目置かれるのではと猛勉強し、周りの態度が変わったことから、自分の頑張り次第で人の心や意識は変わると考えていると語りました。すでに日本に逃れていたアフガニスタン出身の父親を頼って来日したジャファールさんは、父親が苦労して働く姿を見ていたため、大学進学を半ばあきらめていたところRHEPを知り、大学進学の夢を叶えることができました。難民にとって教育は、自身に能力と自信を与えるエンパワーメントの手段であり、日本社会に統合するためにも、なくてはならないものであると語りました。

日本の学生へのメッセージとして、シャンカイさんは、何よりも“理解”が大切であること、難民としてではなく、友達として相手を理解することの大切さについて語りました。ジャファールさんは、社会との関わりなしには難民の社会統合も進まないことに触れ、外国人や難民にぜひ積極的に関わってほしいとし、チャンさんは、自身が大学で学んだことで夢を実現できたことから、ぜひ勉強を頑張ってほしいとエールを送りました。

質疑応答では、グランディ高等弁務官に対して、渡航制限地域におけるUNHCRの支援のあり方、NGOとUNHCRの連携についての問いが投げかけられました。安全のためにどうしても支援地域に入ることができない場合があるものの、UNHCRはできる限り難民と“共にいる”ことを大切にしており、さらには難民のみならず、難民が逃れる地域の人々への支援も同時に行うことが必要であると述べました。また、難民支援は一義的には国が行うものであるしつつも、NGOを初めとするパートナーと協働することの必要性について触れたうえで、日本のNGOの現場でのプレセンスが近年高まっていること、政府がNGOをサポートすることの重要性を強調しました。

RHEP卒業生は、難民が新しい生活をスタートするにあたり、地域社会にできることや期待することについて、町内会などの地域コミュニティーにおける外国人の巻き込みに加え、企業による難民向けの奨学金制度の設置、企業内で外国人労働者に対する日本語支援など、さまざまな可能性があるとコメントしました。

第二部の国連キャリアセミナーでは、本田誠外務省国際機関人事センター長が、国連・国際機関職員に必要な資格や就職支援のための制度、UNHCRをはじめ国連・国際機関職員として働いている日本人の状況などを説明したのち、特に若い世代にぜひ挑戦してほしいとエールを送りました。また、UNHCR古本秀彦駐日事務所渉外担当官により、ユーゴスラビア、ウガンダ、イラン、イエメンなどでNGO、政府機関、UNHCRの職員として働いた経験が共有され、現場での経験が、現在の日本での業務に役立てられていると述べました。

第一部、二部を通して、難民支援における教育の重要性をあらためて確認し、また、世界規模の課題を解決するために、多くの若者にUNHCRを初めとする国連・国際機関で活躍してほしいというメッセージをもって、閉会となりました。

 

写真提供:上智大学