シリア難民が作ったチーズがイギリスで大ヒット!

2017年1月、ヨークシャーのチーズ工場を訪れたアン王女を案内するアルサス
© Yorkshire Dama Cheese Ltd

アルサス(33)が夫と3人の子どもたちとシリアからイギリスに逃れてきたのは2012年末。ダマスカスで営んでいた薬局も爆撃に遭い、何もかもを失った状態でした。

「過去を振り返っている暇はありませんでした」

難民として認定されてすぐ、日々暮らしていくために仕事を探し始めました。でも、難民として定職に就くことは簡単なことではありません。

そこでたどり着いたのが“ハルミチーズ”です。

シリアの人たちにとって、ハルミチーズは朝食に欠かせないアイテム。パンとオリーブと一緒に食べるのが定番ですが、アルサスは、ヨークシャーに来てからハルミチーズを見つけることができませんでした。そこでひらめいたのです。ここで作ったらどうだろうと。ヨークシャーは乳製品の名産地で、チーズ作りの環境は整っていました。

とは言っても、慣れない土地での挑戦には試練が伴いました。チーズ作りの経験もなかったため、中古で道具をそろえ、インターネットでレシピを研究しました。地域のスタートアップを支援している団体から2500ポンド(約38万円)を借りることができたこともあり、ビジネスは少しずつ軌道に乗り始めました。

「私が別の土地から来ていると知り、みんな新しいビジネスを立ち上げることを応援してくれました。“何か新しいもの”が味わえるという期待も大きかったのです」

アルサスが経営する「ダマチーズ」で作った製品は3年もたたないうちに17もの賞を獲得し、スコットランドやコーンウォールなど他の地域でも販売されるように。2017年1月の新工場のオープンにはアン王女が訪問し、その時の写真は宝物としてオフィスに飾られています。

「ヨークシャーでビジネスを成功できたのは、周囲のサポートがあったから。私たち家族に住む場所や生きるために必要なものを支援してくれたイギリスにとても感謝しています」

難民が避難先で仕事を得るには、言語の習得はもちろん、職種によって資格やトレーニングが求められます。雇用する側も難民のバックグラウンドや必要なトレーニングをよく理解する必要があり、両者のギャップを埋めるためには、政府やNGO、民間企業などの連携がカギになります。

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