無国籍
少数派の人々に対する国籍法上の差別がある場合、国家が独立(国家承継)した際にそれまでの住民の一部が国民として受け入れられない場合、関係国の法(両親や出生国の国籍法など)が対立し相容れない場合などがあります。無国籍は規模の大きな問題であり、2020年末時点で世界中で420万人が把握されていますが、各国でのデータの把握が徹底しておらず、実際にはずっと多くの人が無国籍であると言われています。
無国籍は個人の生命を脅かすものでもあります。国籍は、完全なる社会参画と幅広い人権の享受には必要不可欠です。
一般的に人権はすべての人に保障されるべきものとされていますが、投票権などの一部の権利は国民のみに限定されることがあります。重大な懸念としては、無国籍者は投票権どころか、さらに基本的な権利も脅かされていることです。旅券はおろか身分を証明するものも所持しておらず、無国籍であることで適法に入国・在留することが困難です。それが理由で拘禁される可能性もあり、さらには教育や医療サービスへのアクセスが許可されず、職も得られないこともあります。
こういった深刻な状況をうけ、国連は「無国籍者の地位に関する1954年条約」「無国籍の削減に関する1961年条約」を採択しました。
しかしながら、無国籍の問題は、適切な国籍法と手続きの設置、出生登録の徹底などを通じて防ぐことが可能です。UNHCRは、政府と協力して無国籍の発生を防ぎ、すでに発生してしまったケースについてはそれを解決し、無国籍者の権利を守るという任務を負っています。
無国籍に関する二つの条約を締結し、それを基に行動を起こすことは、この課題の解決に向けての重要な一歩となります。