2020年1月10日、UNHCRは国際オリンピック委員会(IOC)から2019年「オリンピック・カップ」を授与されました。
オリンピック・カップは1906年、近代オリンピックの父ピエール・ド・クーベルタン氏によって創設され、スポーツにおける意義ある取り組み、オリンピックのアイデア推進に貢献した組織に毎年贈られています。今回UNHCRは、スポーツを通じた難民と受け入れコミュニティへの支援、世界各地でのオリンピック・ムーブメントの価値の普及が評価されての受賞となりました。
今回の受賞を受けて、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「いかなる困難な状況においても、スポーツを通じてさまざまな機会を提供することに力を注いできた世界各地の同僚たちと喜びを分かち合いたい。そしてもちろん、スポーツの革新的な力を理解し、自分たちに提供された機会を生かし生きる糧としてきた故郷を追われた人たち、受け入れコミュニティにとっても大きな贈り物だ」と話しました。
トーマス・バッハIOC会長は「UNHCRはオリンピックの価値の賛同者であり続け、難民支援という分野において、IOCやオリンピック・ムーブメントに多大な貢献を果たしてきた。その活動は、世界をより良いものにするために、スポーツの力を信じているからこそ実現できるものだ」と強調。「世界を変える原動力として、UNHCRとIOCは共にスポーツの力を信じている。紛争や迫害によって故郷を追われた子ども、若者にとって、スポーツは単なる余暇ではない。社会への参加、社会から保護を受けるきっかけであり、自身の癒やし、発展、成長の機会でもある」と話しました。
スポーツはUNHCRの活動において、故郷を追われた子どもや若者を守り、能力を伸ばすために、また、社会統合や受け入れコミュニティとの関係構築のために重要な柱の一つです。グランディ高等弁務官は「スポーツは身体的なメリットだけではない。フィジカル、メンタルの健康につながるに加え、チームワーク、友情、尊敬を学び、故郷を追われた人たちと受け入れる人たちとの相互理解にもつながる。これを達成するために、UNHCRとIOCのパートナーシップは非常に効果的で重要である」と話しました。
2016年のリオ五輪で、10人の難民アスリートがオリンピックに、2人がパラリンピックに参加したことを受けて、世界の難民にとって “五輪” が身近なものになりました。以降、2017年のアジアインドア・マーシャルアーツゲームズ(トルクメニスタン)、世界陸上競技選手権大会(ロンドン)をはじめ、難民アスリートたちは数多くの地域、国、国際レベルの大会に出場してきました。
IOCは2018年にブエノスアイレスで行われた第133回IOC総会において、リオ五輪のレガシーを受け継ぎ、2020年の東京五輪でも「IOC難民五輪選手団(難民選手団)」を結成することを決定しました。これは、IOCが世界的な難民危機を訴え、世界の数千万人もの難民への連帯と希望のメッセージを伝える役割を果たすことを示しています。
現在、東京五輪への出場を目指し、20カ国・50人の難民アスリートがIOCの奨学金を受けてトレーニングを続けています。11の競技(陸上、バドミントン、ボクシング、自転車、柔道、空手、射撃、水泳、テコンドー、重量上げ、レスリング)から、最終的な難民選手団は6月に発表されます。
リオ五輪で男子陸上800メートルに出場し、東京で2回目の出場を目指す南スーダン難民のイエ―シュ・ピュール・ビエルは、「UNHCRとIOCから受けてきたサポートは本当に素晴らしいものです。私がアスリートであり続け、さまざまな国に行き、新しい友達をつくるチャンスを与えてくれました。そのおかげで、私はたくさんの夢をかなえ、今も夢を追い続けることができているのです」と話します。「どこに暮らしていようとも、すべての難民が、少年も少女も、男性も女性も、何らかのスポーツをするチャンスを得られることを私は強く望んでいます」。
イエ―シュ・ピュール・ビエル
リオ五輪 難民選手団 男子陸上800メートル
リオ五輪で女子競泳200メートル自由形に出場し、危険な避難の道のりを経験したことでも知られるユスラ・マルディニは、「スポーツは文字通り、私の命を救ってくれました。だから私は、すべての人がスポーツに参加するチャンスを持つべきだと思います。スポーツは健康を超える利点があります。心配事から解放してくれたり、自身の目標を持ったり、他人に対する尊敬も学ぶことができます。知らない人とつながるきっかけにもなります。私はUNHCRの親善大使として、すべての難民がスポ―ツに参加できるような世の中を実現したい。そのためにも、UNHCRとIOCの活動は何にも代えがたいものです」と訴えます。
ユスラ・マルディニ
リオ五輪 難民選手団 女子競泳200メートル自由形
UNHCRとIOCのパートナーシップは4半世紀以上にもおよびます。1994年に連携協定を締結して以降50以上の国で、草の根からエリートまで、さまざまなレベルで難民にスポーツの機会を提供してきました。2017年には、IOCがオリンピック難民財団(ORF)を設立。バッハIOC会長が議長、グランディ高等弁務官が副議長を務め、故郷から移動を強いられた若者、受け入れコミュニティの人たちが、基本的なスポーツ施設に安全にアクセスできるよう取り組みを進めています。
先月、スイス・ジュネーブで開催された「グローバル難民フォーラム」でも、UNHCRとIOCはスポーツに関する新たな連帯の取り組みを発表。難民の若者にスポーツの機会を提供し、施設、イベント、競技大会へのアクセスを支援していくとしています(くわしくはこちら)。
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