UNHCR駐日事務所は、国内外で数々の賞を受賞してきた劇作家・演出家で、教育者の平田オリザさんが学長を務める芸術文化観光専門職大学と共同プロジェクトを立ち上げ、”誰一人取り残さない社会”の醸成に必要な「他者理解」やコミュニケーション技術について学ぶ「演劇ワークショップ型教材」の開発を始めました。
教材は2024年7月ごろに発表し、高校の探究学習の授業をはじめ、教育機関や自治体などで広くご活用いただけるよう、オンラインで一般公開する予定です。4月15日にUNHCR駐日事務所の公式ウェブサイト内に立ち上げた特設ページで、本プロジェクトの最新情報を順次お伝えしていきます。
◾️共同プロジェクトについて
紛争や迫害によって故郷を追われた人の数が、世界で1億1,000万人を超えたいま。異なる文化的背景や価値観を持つ「他者」が隣り合う社会で、私たちはどのように対話し、共に生きていけばいいのかーー。
本プロジェクトでは、世界約135カ国で活動し、複雑に拡大を続ける難民問題の最前線で人道支援を続けているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と、日本で初めて「芸術文化」と「観光」の両方を学ぶことのできる県立の専門職大学として2021年に開校した芸術文化観光専門職大学が共同で、異なる文化的背景や価値観をもつ人々が互いを受け入れ、共に社会を築いていくために必要な「他者理解」やコミュニケーション技術について学ぶ「演劇ワークショップ型教材」を開発しています。
劇作家・演出家として国内外で数々の賞を受賞し、教育者としても第一線で活躍する平田オリザさんの指揮のもと、学生や教育関係者、映画監督、そして難民の背景を持つ方々などが、それぞれの専門性や経験を持ち寄り、広くご活用いただけるような教材を目指して、制作を進めています。
◾️なぜ演劇教育なのか
20年以上にわたって「演劇的手法」を用いたコミニュケーション教育を実践してきた平田さんは、他者を演じる行為である演劇こそ、「わかりあえない」相手と対話し、理解するための力を養うことができると提唱してきました。
UNHCRは「持続可能な開発目標(SDGs)」の基本理念である「誰一人取り残さない社会」を築き、難民の自立と活躍を支える「社会全体で取り組む難民支援」を広げていくためには、「他者」を恐れず、「違い」を楽しみ、互いを受け入れ合うことのできる包摂的な社会の醸成が重要だと考えています。
◾️UNHCR駐日代表・伊藤礼樹 コメント
世界では今、74人に1人以上が紛争や迫害によって故郷を追われています。「難民」は遠い海の向こうの存在ではなく、私たちと共に暮らす「隣人」であり、共にこれからの社会を築いていく一員です。異なる価値観や文化的背景を持つ人々が「違い」を恐れず、対話を通じて理解を深め、互いを尊重しながら共生していくことのできるインクルーシブな社会の実現に向けて、本プロジェクトの教材が一助となることを願っています。
◾️平田オリザさんコメント
芸術文化観光専門職大学は芸術と観光で地域を笑顔にし、世界平和に貢献することを理念としています。特に演劇は、いにしえより他者理解を深め、異なる民族との融和について考える機会を提供してきました。私たちは演劇を通じて、難民の複雑な状況を若い世代の皆さんに、少しずつでも我がこととして感じてもらえるように、また議論のきっかけになるように教材作りを進めていければと考えています。
◾️今後の予定(※変更の可能性あり、最新情報はこちら)
2024年 4〜5月 | ・難民の背景を持つ方々への取材などをもとに教材用演劇作品の脚本を制作 ・教材用演劇作品の映像化に向けた撮影 |
6月 | ・プロジェクト参加者(映像監督・出演者など)発表 ・トライアル授業 ・世界難民の日(6月20日)を記念したイベントで教材の一部を発表 |
7月 | ・教材を特設サイトで一般公開 ・記者会見 ・報道・教育機関・自治体向けの説明会などを実施 |
◎プロジェクトの最新情報は、UNHCR駐日事務所公式ウェブサイトの特設ページでお知らせします。また、各取り組みごとに取材をご検討いただけます。ご関心のあるメディアの方は、問い合わせ先の伊吹([email protected])までご連絡ください。
◾️UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とは
国連の難民支援機関であるUNHCRは、難民、国内避難民、無国籍者などを国際的に保護・支援するため、世界約135カ国で活動しています。2023年12月にスイス・ジュネーブで開催された「第2回グローバル難民フォーラム」で共同議長国を務めた日本と連携しながら、多様なパートナーとともに、“社会全体で取り組む難民支援”の推進に取り組んでいます。1954 年、1981年にノーベル平和賞を受賞。本部はスイス・ジュネーブ。
◾️平田オリザさんプロフィール
劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長青年団主宰。江原河畔劇場 芸術総監督。こまばアゴラ劇場芸術総監督。1962年東京生まれ。
1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞、2019年『日本文学盛衰史』で第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞。2011年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。2019年より豊岡市日高町に移住し、劇団の新拠点となる江原河畔劇場を設立。豊岡市芸術文化参与、豊岡演劇祭フェスティバル・ディレクターもつとめる。演劇の手法を用いた多様性理解・コミュニケーション教育にも取り組み、各地での講演や、国語教科書にも採用された対話劇ワークショップの授業を行っている。
近著に『ともに生きるための演劇』(NHK出版)、『名著入門 日本近代文学50選』(朝日新聞出版)、『但馬日記 〜演劇はまちを変えたか〜』(岩波書店)など。
◾️芸術文化観光専門職大学とは
2021年に兵庫県北部に誕生した日本で初めて「芸術文化」と「観光」の両方を学ぶことのできる県立の専門職大学。本格的な設備を有する劇場など充実した施設と豊富な観光資源を有する地域が、あらゆる創造と体験など実践的な学びを可能にしている。教員には世界を舞台に活躍するアーティストから、アート・観光ビジネスを牽引してきた第一線の実務家まで多彩な分野のプロフェッショナルが在籍。
少人数制・担任制で、授業の約3分の1(800時間)を実習にあて、理論と実践を交互に繰り返すクォーター制の採用により、知識の確実な理解と実践力を身につけた人材の育成を図っている。芸術文化・観光学部、同学科の1学部1学科、定員80名。1~4年生の330名が在籍(2024年4月時点)。
◾️お問い合わせ先
UNHCR駐日事務所・広報 伊吹 Mail: [email protected]
芸術文化観光専門職大学・地域協働課 日下部 Mail: [email protected]