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50 by 35 ビジョン

50 by 35 ビジョン

UNHCRは、長期にわたり避難生活を送る難民が、自立に向かい解決策への道筋を見出すことで、2035年までに支援への依存から脱却できるよう、国際社会の関心を高め、具体的な行動を促しています。

それが「50by35(フィフティー・バイ・サーティーファイブ)ビジョン」です。
A woman wearing blue gloves looks through a microscope in a laboratory.

世界はいま

現在、世界では、難民の約7割にあたる2,500万人が、5年以上にわたって避難生活を余儀なくされています。そのうち1,450万人を超える難民が、日々の生活に必要なものを確保するために支援に依存しています。

難民は、一人ひとりがスキルや知識、そして困難を乗り越える力(レジリエンス)を持っており、受け入れ国の経済や地域社会にとって意味のある貢献をしたいと考えています。しかし、実際にはさまざまな障壁があり、そうした力を発揮する機会が限られているのが現状です。

避難の長期化は、政策上の課題であるだけでなく、難民一人ひとりの人生にも関わります。長期にわたる避難生活から抜け出せず、人道支援に依存しながら自立や解決への現実的な見通しを持てない状況は、基本的人権、つまり人間としての尊厳を脅かします。

人道支援は、命を救うために引き続き不可欠です。しかし、支援を続けること自体が、最終的な目標ではありません。自立した生活を取り戻し、将来を築く機会を十分に得られないまま、あまりにも多くの難民が、何年にもわたって故郷を離れて暮らしています。

この状況は持続可能ではなく、これ以上放置することはできません。

恒久的な平和の実現、そして故郷への安全な帰還に向けた環境整備が進められる間も、難民が自らの人生を取り戻し将来を築いていけるよう、必要な機会を確保することが重要です。

難民であることは、生涯続く運命であってはなりません。一時的な状態であるべきなのです

バルハム・サーレハ国連難民高等弁務官

目指すべき方向性

UNHCRは、長期にわたる低中所得国での避難生活で支援に依存している難民の半数、約800万人が、自立して解決策への道筋を見出し、2035年までに支援への依存から脱却できるようになることを目指しています。

これは、これからも命を救うために不可欠である人道支援に取って代わろうとするものではありません。緊急時に必要な支援を提供し続けると同時に、難民一人ひとりが持つ可能性を最大限に発揮し、自らの未来を切り開いていけるよう支えることで、人道支援への依存からできるだけ早く抜け出せるようにするものです。

このビジョンは、UNHCRが担う国際保護の任務に基づき、庇護を求める権利へのアクセスを含む、難民保護の基本原則に沿って進められます。難民の自立と解決策に向けた取り組みは、これまでも、そしてこれからも、常に保護を強化するものでなければならず、保護に取って代わるものであってはなりません。

この取り組みは、「難民に関するグローバル・コンパクト」で示されたコミットメントと、これまでの「グローバル難民フォーラム」を通じた成果を基盤としています。

また、国際社会が責任を共有し、連帯して取り組むものでもあります。難民の自立を促進し、受け入れ国の負担を軽減するとともに、解決策の選択肢を広げ、安全かつ尊厳ある帰還に向けた環境整備を支えます。

これは、強制移動への対応をただ続けるだけでなく、その解決を目指す方向への転換です。難民であることは人生の一時期であるべきであり、その人の人生のすべてであってはならないからです。

目標達成に向けて

これは、一つの組織や一つの活動だけで実現できるものではありません。避難の初期段階から、解決に向けた取り組みをより重視していく必要があります。このビジョンの実現に向けて、UNHCRは、各国政府、国際開発機関、国際金融機関、民間セクター、その他さまざまなパートナー、そして当事者である難民による支援を結集し、連携していきます。

そのために、各国政府が主導する活動やロードマップに基づき、国際社会の連携とパートナーシップを通じた支援を進めます。UNHCRはそのために必要なリソースの動員、調整の役割を担います。

目標を達成するには、平和構築を進め、また、難民の自立のための機会、財政的・法的な道筋を広げるために、より一層連携を強化していく必要があります。

その中心となるのは、互いに補い合う二つの取り組み、自立の促進と恒久的解決の推進です。

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自主的で、安全かつ尊厳ある出身国への帰還

多くの難民にとって、故郷に帰ることは何よりも切実な願いです。そのためには、平和の実現に向けた政治的・外交的な働き掛けを強化するとともに、紛争後の復旧・復興に投資し、脆弱な国家への支援を継続することが必要です。帰還は、持続可能な再統合が可能となる環境のもとで、自主的に、安全かつ尊厳をもって行われなければなりません。危険な状況に戻ることを、誰一人として強いられてはなりません。

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受け入れ国での自立の促進と各国の制度への包摂

難民の自立の基盤となるのは、働く権利、自由に移動する権利、そして受け入れ国の国民と同じサービスにアクセスする権利です。それにより、難民は収入を得て、生活を再建する機会を得られます。そのためには、受け入れ国が、難民を自国の制度に包摂するために必要な資金や支援を確保する必要があります。難民が受け入れコミュニティと同じサービスを利用し、同じ権利や機会を得られるようになれば、その社会のすべての人が恩恵を受けることができます。その実現には、難民が社会に十分に参加し貢献できるように、受け入れ国の政策に加え、民間セクター、開発援助機関、そしてドナー国による雇用創出や投資が必要です。

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受け入れ国での社会統合

受け入れ国の政府が、帰化、長期滞在、または出身国による保護を再び受けられるようになった後に付与されるその他の法的地位などを通じて、難民が恒久的に滞在できる法的枠組みを整備している場合、長期化する避難生活から抜け出すための最も持続的な解決策の一つとなります。 

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第三国での解決策

第三国定住、就労、教育、家族再統合を目的とする第三国への移動、コミュニティ・スポンサーシップ制度、その他の人道的な受け入れプログラムは、難民に保護と解決への道を開きます。こうした第三国による正規の難民受け入れの枠組みは、国際社会の連帯と責任の分担を示すために重要であり、「50 by 35ビジョン」の実現にも欠かせません。第三国定住による受け入れにおいて難民が国籍を取得できる枠組みを整備するとともに、補完的な受け入れにおいても、難民が正規の在留資格を得て、将来的には帰化を申請できるようにすることが重要です。

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各国での好事例

これまでの事例から、長期化する避難を解決する最善の方法は、持続的な平和と安定を実現することであると分かっています。しかし、平和構築の取り組みが続く地域でも、政府、民間セクター、その他のパートナーが、恒久的解決策の実現、難民の自立を支える取り組みを進めています。

シリア:アサド政権の崩壊、国内の多くの地域での戦闘終結以降、150万人以上のシリア人が故郷に帰還しています。いま必要とされているのは、復興を進め、持続可能な帰還と再統合を支えるための開発資金です。

ブラジル:150以上の企業や経済団体が参加する「Companies with Refugee Forum」では、参加企業などが合わせて1万4,000人以上の難民を雇用し、さらに数千人に職業訓練を提供しています。こうした就労や職業訓練の機会を拡大することにより、難民の自立とブラジル経済への貢献を後押ししています。

コロンビア:コロンビアは早い段階から、ベネズエラからの難民や移民を法的・行政的な制度に包摂し、身分証明書などの書類の取得、各種サービスの利用、経済活動の機会へのアクセスを可能にしてきました。これにより、支援への依存が軽減され、生活水準が向上するとともに、難民と受け入れコミュニティの双方に利益をもたらす経済的な貢献も促進されています。

エチオピア: 難民の包摂に向けた明確なロードマップを示す「Makatet Roadmap」を通じて、各種証明書の取得、教育、保健医療、雇用、地域のサービスへのアクセス拡大を実現しています。開発分野とのパートナーシップを基盤とし「初期段階から解決策に取り組む」というアプローチを反映したもので、難民の支援への依存から自立への移行を後押しするとともに、受け入れコミュニティにも利益をもたらしています。

マレーシア:UNHCRとIOMは、難民を職業訓練や国外での雇用機会につなげる「Train-to-Hire」という取り組みを進めています。難民が自立する力を高めるとともに、より長期的な解決策への道筋を開くものです。

ケニア:ケニア政府が主導する「シリカ・プラン」は、人道支援から、難民の自立と受け入れコミュニティとの平和的共存へと移行するための大胆な枠組みです。法的な身分の証明、就労許可、金融サービス、教育、保健医療へのアクセスを拡大することで、難民が地域社会における経済活動の担い手となれるよう支援することで、人道支援への依存の軽減につなげています。

ウガンダ:ウガンダは、先進的な難民政策の有効性を示し続けています。開発援助機関と連携し、農業、市場、雇用を通じた自立支援を拡大しています。

今こそ行動する時

2026年は、「難民の地位に関する1951年の条約」(難民条約)の採択から75周年にあたります。難民の保護はもちろん、解決への道筋を広げ、長期的な支援への依存を減らすことをあらためて確認する時です。

自立と解決策を推進すること、それは、難民条約の中核をなす国際保護の制度と一体的に進めていかなければなりません。