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サーレハ国連難民高等弁務官、「私たちは難民を保護しなければならない。しかし同時に終わりなき強制移動への対応も必要だ」

ストーリー

サーレハ国連難民高等弁務官、「私たちは難民を保護しなければならない。しかし同時に終わりなき強制移動への対応も必要だ」

2026年10月12日
A man speaks at a lectern on a auditorium stage with people behind him seated beneath large screens while an audience looks on

ジュネーブで開かれたUNHCR執行委員会の開会セッションで演説するバルハム・サーレハ国連難民高等弁務官

新たな紛争の発生、危機の長期化、人道支援資金の削減により、世界では強制移動の解決が追いつかないほどの速さで、故郷を追われる人々が増えています。バルハム・サーレハ国連難民高等弁務官はUNHCR執行委員会の年次会合で加盟国に対し、故郷を追われた1億1,700万人という歴史的な数字の背後には、「苦しく、悲劇的な一人ひとりの現実」があると訴えました。

サーレハ高等弁務官は、ジュネーブで開催されたUNHCR執行委員会の年次会合で初めて演説し、就任からの9カ月間、UNHCRのマンデートのもとで支援を必要とする人々を助ける責任について、深く個人的な視点から向き合ってきた、それは、自身の強制移動の経験、元国家元首の経歴が、その背景にあると語りました。

「私は、保護を必要とするとはどういうことかを知っています。また、政府が難しい決断を迫られることも、その決断が人々の生活にいかに影響を及ぼすかも理解しています。プレッシャーは現実のものです。そして、私たちが負う責任も現実です」と述べました。

今年1月の就任以来、サーレハ高等弁務官は、世界15カ所、チャドやウクライナ、エチオピア、アフガニスタン、シリア、ベネズエラなどのUNHCRの活動地を視察しました。

A man and a woman walk side by side up the staircase of a narrow street beside tin-roofed buildings

1月にエクアドルから帰還したアンドリウスカ・ベジョさんとともに、ベネズエラの首都カラカスのペタレ地区を歩くサーレハ高等弁務官

こうした視察を通じて、UNHCRが組織の歴史において非常に困難な局面に直面していることを再認識するとともに、ある重要な確信を一層強めました。

「人々が故郷を追われたとき、私たちは保護しなければなりません。しかし、終わりなき避難生活を、その人々の未来として受け入れるわけにはいきません。私たちは、救った命だけでなく、人々が生活を再建できたか、そして持続的な解決策を見いだせたかどうかによっても、成功を測らなければなりません」

この理念は、UNHCRが掲げる「50by35 ビジョン」の中核をなすものです。低中所得国で長期にわたる避難生活を送り、生きていくために人道支援に頼らざるを得ない難民の数を2035年までに半減させることを目指しており、現在、その数は約1,450万人にものぼります。

UNHCRは、各国政府、開発援助機関、民間セクター、市民社会、難民主導の組織など、さまざまなパートナーと連携しながら、この意欲的な目標の達成を目指します。難民の包摂、自立を促進するための実践的な取り組みを進めるとともに、自主帰還など、強制移動の長期的な解決につながる道筋を確保していきます。

このビジョンの実現に向け、高等弁務官は新たなイニシアチブを発表しました。難民の雇用機会や金融サービス、起業、 市場へのアクセス拡大を目指す「Global Strategy for Self-Reliance」、難民の自立や社会的包摂、解決策の推進を加速させるため、柔軟な複数年の資金を提供する「50 by 35 Accelerator」、そして、大学をはじめとする高等教育への難民のアクセス拡大を目指す「Aiming Higher」が含まれます。

A man in a suit talks to a pupil in uniform as they sit at school desks in a classroom full of students

2026年1月、ケニアのカクマにあるカロベイエ難民居住区の学校で児童・生徒たちと話すサーレハ高等弁務官

サーレハ高等弁務官は強調します。「しかし、ここではっきりしお伝えしたい。50by35は、人道支援を減らすための目標ではなく、人道支援を必要とする人々を減らすための取り組みだということです。人々の生活が実際に改善され、自立して地域社会の一員として貢献できるようになったかどうかによって、成功かどうかは測られなければなりません。引き続き人道支援を必要とする人々に対する私たちの責任は、これからも変わりません」。

成功のためには、難民受け入れ国への追加的な資金や支援の投入が不可欠です。現在、世界の難民の約80%を受け入れている国々は、世界全体の富のわずか27%しか占めていません。サーレハ高等弁務官は、「包摂は、善意だけで実現できるものではありません。受け入れ国の主導的な取り組みには、それに見合う国際社会の支援が伴わなければなりません」と話します。

「難民に関するグローバル・コンパクト」は、このビジョンの実現に必要な協力の枠組みをすでに提供しています。しかし、最新のデータからは、難民受け入れ国が担っている取り組みと、国際社会によって提供される資金やその他の支援との間に、大きな差があることが明らかになっています。サーレハ高等弁務官は、2027年に開催される次回の「グローバル難民フォーラム」が、この差を埋める重要な機会になると述べました。

サーレハ高等弁務官はまた、この“大きな変革”の時期に、UNHCRが進めてきた改革についても言及しました。UNHCRは、新たな現実や優先課題に対応するため、財務管理の強化、業務効率の向上、現場での支援活動の優先に取り組むとともに、組織の歴史上、最も大規模な人員体制の見直しの一つを実施してきました。

職員数は3分の1以上削減され、2024年には約2万人だった職員数は、現在では1万2,000人を下回っています。また、UNHCRの2026年予算は現時点で30億米ドルにとどまり、必要とする総額85億米ドルの約35%にすぎません。

サーレハ高等弁務官は、「私たちが目指しているのは、単にUNHCRの組織を小さくすることではありません。最も大きな価値を発揮できる分野に重点を置き、難民と受け入れコミュニティに対して、保護、支援、そして解決策をより効果的に提供できる、そんなより強いUNHCRを目指しているのです」と述べました。

「しかし、効率化にも限界があります。少ないリソースでより多くのことを成し遂げることと、実現不可能なことを求められることは別です」

サーレハ高等弁務官は、難民条約で75年前に取り決められた約束を、各国の代表団にあらためて共有して締めくくりました。「迫害から逃れてきた人々は保護を求めることができ、難民は命や自由を脅かされる場所に送り返されてはならない」と。

その約束は、これまでいくつもの世代にもわたって人々の命を救い、今なお極めて重要である一方、かつてないほど厳しい試練にさらされていると述べました。

「75年後、次の世代が、私たちが今する選択を振り返るでしょう。責任を果たすのが難しくなり、背を向けた世界を目にするのでしょうか。それとも、歴史から学んだ教訓を忘れない世界を目にするのでしょうか」

▶原文(英語)はこちら