レポート:フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官公開講演「難民の国際保護と私たちにできること~教育の役割~」/国連キャリアセミナー

レポート:フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官公開講演「難民の国際保護と私たちにできること~教育の役割~」/国連キャリアセミナー





ベトナムを逃れ、日本で起業家として活躍するチャンさんは、2度目の挑戦でRHEPに合格、大学ではゼミの先生に恵まれ非常に充実した大学生活を過ごしたこと、現在はビジネスを通して、平和が訪れたベトナムと日本の懸け橋となっていることについて話しました。両親がミャンマーから日本に逃れ、東京で生まれ育ったシャンカイさんは、中学生の時に外国人であることを理由にいじめを受けるまで、自身が難民であることを意識したことはなかったと言います。そこで、勉強ができると一目置かれるのではと猛勉強し、周りの態度が変わったことから、自分の頑張り次第で人の心や意識は変わると考えていると語りました。すでに日本に逃れていたアフガニスタン出身の父親を頼って来日したジャファールさんは、父親が苦労して働く姿を見ていたため、大学進学を半ばあきらめていたところRHEPを知り、大学進学の夢を叶えることができました。難民にとって教育は、自身に能力と自信を与えるエンパワーメントの手段であり、日本社会に統合するためにも、なくてはならないものであると語りました。
日本の学生へのメッセージとして、シャンカイさんは、何よりも“理解”が大切であること、難民としてではなく、友達として相手を理解することの大切さについて語りました。ジャファールさんは、社会との関わりなしには難民の社会統合も進まないことに触れ、外国人や難民にぜひ積極的に関わってほしいとし、チャンさんは、自身が大学で学んだことで夢を実現できたことから、ぜひ勉強を頑張ってほしいとエールを送りました。
質疑応答では、グランディ高等弁務官に対して、渡航制限地域におけるUNHCRの支援のあり方、NGOとUNHCRの連携についての問いが投げかけられました。安全のためにどうしても支援地域に入ることができない場合があるものの、UNHCRはできる限り難民と“共にいる”ことを大切にしており、さらには難民のみならず、難民が逃れる地域の人々への支援も同時に行うことが必要であると述べました。また、難民支援は一義的には国が行うものであるしつつも、NGOを初めとするパートナーと協働することの必要性について触れたうえで、日本のNGOの現場でのプレセンスが近年高まっていること、政府がNGOをサポートすることの重要性を強調しました。
RHEP卒業生は、難民が新しい生活をスタートするにあたり、地域社会にできることや期待することについて、町内会などの地域コミュニティーにおける外国人の巻き込みに加え、企業による難民向けの奨学金制度の設置、企業内で外国人労働者に対する日本語支援など、さまざまな可能性があるとコメントしました。
第二部の国連キャリアセミナーでは、本田誠外務省国際機関人事センター長が、国連・国際機関職員に必要な資格や就職支援のための制度、UNHCRをはじめ国連・国際機関職員として働いている日本人の状況などを説明したのち、特に若い世代にぜひ挑戦してほしいとエールを送りました。また、UNHCR古本秀彦駐日事務所渉外担当官により、ユーゴスラビア、ウガンダ、イラン、イエメンなどでNGO、政府機関、UNHCRの職員として働いた経験が共有され、現場での経験が、現在の日本での業務に役立てられていると述べました。


第一部、二部を通して、難民支援における教育の重要性をあらためて確認し、また、世界規模の課題を解決するために、多くの若者にUNHCRを初めとする国連・国際機関で活躍してほしいというメッセージをもって、閉会となりました。
写真提供:上智大学