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【インタビュー:J-FUN(日本UNHCR評議会)共同議長佐伯美苗さん】

【インタビュー:J-FUN(日本UNHCR評議会)共同議長佐伯美苗さん】

6 12月 2013

今回インタビューをさせて頂いたのは、J-FUN(Japan Forum for UNHCR and NGOs,日本UNHCR評議会) の共同議長を務める佐伯美苗さんです。




















©UNHCR

J-FUNは、難民支援と保護活動に取り組む日本のNGOとUNHCRが運営するフォーラムで、現在20以上の団体が加盟しています。J-FUNでは、難民問題に関する相互の情報交換とキャパシティビルディング、また日本社会での難民問題の広報・啓発活動に取り組んでおり、情報の交換と発信、政策提言、広報活動、共同イベントの計画・実施などを行っています。

佐伯さんはアフガニスタン、パキスタンなどで人道支援に携わり、現在は特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)でスーダン事業を担当される傍ら、2008年からJ-FUNの共同議長としてその活性化に尽力されてきました。今回は佐伯さんからJ-FUNの活動内容や今後の展望、NGOと国際機関の連携についてのお話を伺ってきました。

‐佐伯さんが人道支援に関わるようになったきっかけを教えてください。

人道支援を志して専門の勉強をして職に就いたというよりは、たまたま最初に入ったNGO(特定非営利活動法人AMDA)でその仕事をすることになったことがきっかけです。ただ、元々私は体が先に動いて、考えながら走って行くタイプ。そういう気質が人道支援の現場に合っていたのかもしれません。

幼い頃から、環境問題など様々なことに取り組んでいた母の影響で、日本の社会問題に興味があり、たいへん口幅ったい表現になってしまいますが、日本の社会を良くする一助になりたい、という願いを持っていました。大学に入り、在日外国籍の方々を支援する市民団体や野宿労働者支援の団体でボランティアをするようになり、大学院修了後一般企業に就職したのですが、30歳になる直前に、ひょんなことからNGOに入り国際協力の道に入りました。

最初に働いたNGOでは緊急・復興ステージの事業を担当する部署で、コソボ、アフガニスタン・パキスタン、トルコ、イランなどでの事業を担当しました。特に9.11後のアフガニスタン・パキスタンで難民支援・復興支援の仕事をした経験が、今の私のベースになっています。

‐UNHCRとのおつきあいはいつからですか?

やはりそれもアフガニスタン・パキスタンですね。当初は考え方の違いに驚く場面もありましたが(笑)、UNHCRは「体育会系」の団体という印象で、走りながら考える私とは相性が良いと感じました。

わたしが担当するようになった当時は米英軍の攻撃が間近に迫っており、アフガニスタン・パキスタン間国境で難民・難民申請者が押し寄せて待っているというかなり切迫した状態でした。

難民の流入が始まると、現地政府や国連諸機関、NGOとの調整をすばやく進めつつ、キャンプを立ち上げ難民を受け入れ生活のベースを作るということがものすごい速さで行われていきました。その時もてる限りのもので、最適と思われる判断を次々と下して実行してゆく、そういうスピード感と仕事に対する柔軟性を併せ持ったUNHCRと共に働くことで多くのことを学びました。

‐J-FUNの活動にはいつ頃から携わっているのですか?

NGOに入ったばかりの時に、eセンター(注)がアジアのNGOや自治体スタッフを対象とした、人道支援従事者のための研修の第一回に参加する機会がありました。人道支援に関する基本的な知識や業務を包括的にカバーした2週間の研修で、その時に現在のJ-FUN加盟団体のスタッフの方々と議論し、寝食を共にしました。

百戦錬磨の先輩たちと接したことは、当時人道支援の仕事に入ったばかりで、「卵の殻をお尻につけたひよっこ」であった私にとっては非常に得るものが大きく、経験豊かな皆さんとお話をすることで、今まで持っていた人道支援に関する知識が一つにつながり、形となって現れた気がしました。そしてそれが、自分が今後どんな形で人道支援に関わっていくのか、その方向性を決めるきっかけをもたらしてくれたと思います。

この研修で現在のJ-FUNにも関わる方たちの知遇を得られ、また自分がJ-FUNに積極的に関わるようになったきっかけともなり、2008年から共同議長を務めています。

(注)eセンター:2000年に日本政府の「人間の安全保障基金」からの支援を受け、UNHCRが設立した人道援助活動のための訓練センター。

‐これまでJ-FUNではどのような活動をされてきたのですか?


現在は2ヶ月に1度ミーティングを開いて、お互いの活動についての情報共有をしています。また人道支援活動に関する勉強会を企画したり、時には共同で政府に政策提言を行ったり、一般社会への啓発のためのイベントを開催したりもしています。

2011年、日本が難民条約加盟60周年の際には日本政府に難民保護に関する政策提言を行い、官民連携のさらなる強化と人道支援文化へ醸成に関する提言を行いました。

また2007、2008年には一般の方たちに難民支援への理解を深めて頂くための「表参道ジャック」や2012年には多くの加盟団体が関わる南スーダンの現状と支援の展望をテーマとして、「南スーダン復興シンポジウム」といったイベントを主催しました。

こうしたイベントや政策提言を行う時には、加盟団体の発案とイニシアティブが尊重され、共同議長が全体の調整を行いますが、ときにはUNHCRのもつ一般での認知度、知名度を拝借することもあります。

 

共同議長のUNHCR久保と佐伯さん

©UNHCR


‐どんな時にJ-FUNの活動にやりがいを感じますか?

やはり様々な団体に所属する人に会えて、足並みをそろえて一緒に活動し、難民問題の解決に寄与すべく取り組むことでしょうか。人道支援の現場で会うことはあっても、日本で同業者と一緒に一つのことに取り組むという機会は多くはありません。

日本生まれのNGOがあったり、国際アライアンスを持つNGOがあったり、国連職員がいたり、各団体または個人の活動の目的や仕事に対する姿勢や考え方をぶつけあいながらも、イベントや提言に取り組むことは互いにとって強烈な経験だと思います。

また、長く人道支援に取り組まれている先輩方から、つい最近この世界に飛び込んだ若者まで色々な経歴の人に会えるのもJ-FUNという場の魅力だと思います。

‐J-FUNの活動の今後の展望を教えてください。

共同議長としては、「J-FUNだからこそ出来ることは何か」ということを常に模索しているのですが、J-FUNが異なる姿勢をもつ団体が意見を出し合って、何かを生み出すプラットフォームであればと思います。そして、人道支援分野で働く方で、一緒にこのフォーラムを楽しんでくれる方がどんどん出てきてくれたら嬉しいです。

また、J-FUNがUNHCRの付属物のようになってはいけませんが、UNHCRとの連携によって特徴づけられていることも事実です。例えば、難民支援の事業地あるいは事業を起こすことになりそうな地域について、UNHCR職員との情報交換によって事業の参考にしてゆくといったことは、今後の活動にも活かしてゆければと考えています。

‐最後に読者の方々にメッセージをお願いします!

人道支援の仕事に興味がある方々は、紛争地や被災地で働くことを思い描くことが多いと思いますが、そうした活動に支える一つに、J-FUNのようにNGOと国連組織間のネットワークを作り、様々な世代、様々な背景の人たちとの情報や意見交換を通して新たな動きを生み出そうとする活動があります。

人道支援には様々な業務があるということを、そしてJ-FUNという場があることをぜひ知ってほしいと思います。

プロフィール/ 佐伯美苗

社会人類学・社会学を専攻、専門はイスラーム社会の歴史・政治。学生時代に、在日外国籍住民、犯罪被害者の生活支援などの団体にボランティアとして参加。2000年からNGOに転職、緊急・復興支援、難民支援などを担当。2007年10月JVCに移籍。スーダン事業担当。2008年よりJ-FUN共同議長を務める。