性的暴力・搾取を根絶するために~UNHCR職員小田代佳子の挑戦

南スーダンの難民キャンプの学校で子どもたちと小田代職員。UNHCRは児童婚に対する啓発活動を行っている
© UNHCR

3月8日は国際女性デー。、国や民族、言語、文化、経済、政治の壁に関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日です。

UNHCRでも難民や国内避難民、無国籍者などを保護、支援するため、世界各地で多くの女性スタッフが奮闘しています。

UNHCRのウガンダ、南スーダンでの現場経験を経て、現在はジュネーブ本部の倫理担当官として働く小田代佳子さん。彼女が取り組み続けているのは、故郷を追われた人々に対する性的搾取・虐待からの保護(PSEA)です。

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人道支援に携わりたいと思ったのは、大学入学前、バックパッカーとして東南アジアを旅したことがきっかけでした。アンコールワットで物乞いをしてきた小さな女の子は、手足がなく、両親から虐待を受けているようでした。でも私に投げかけてきたのはとびきりの笑顔でした。「この子には、あふれるほどの生きる強さ、可能性がある」と心を動かされました。

そしてその旅の終わりに、プノンペンに学校を建てた日本人に会う機会がありました。

「これこそが、私のやりたいことだ」

話を聞くうちに人道支援の仕事に魅力を感じ、私の将来の夢が確かなものになりました。大学卒業後、北マリアナ諸島の人身売買問題に取り組むNGOを設立して経験を積み、2013年からUNHCRで働いています。

私がUNHCRで担当しているのは、性的搾取・虐待からの保護(PSEA)。今まさに、優先的に取り組むべき分野です。UNHCRは世界130カ国以上で活動していますが、各オフィスにPSEAの担当がいて、それぞれの地域特有の課題に取り組んでいます。

PSEAを担当していて一番つらかったのは、南スーダンでの経験。ある12歳の女の子が路上で誘拐され、レイプされた後、心身ともにぼろぼろで家に戻ってきました。妊娠もしていました。でも、両親は彼女を病院に行かせようとせず、UNHCRもなんとか支援に入ろうとしたのですが、「私の子どもだから関係ない」と拒絶されてしまいました。

12歳で子どもを産むことになれば、その時点で子ども時代は終わってしまいます。将来、お医者さんになってたくさんの人の命を救うかもしれない、子どもたちのお手本になるような先生になるかもしれない、エンジニア、そして大統領にだってなれる。でも、私たちはどうすることもできず、自分の無力さを感じました。

まだまだ過酷な状況はたくさんありますが、少し光も見えてきています。私が南スーダンに着任したばかりのころ、レイプや児童婚について語ることはタブーでしたが、少しずつ変化しています。

その一例なのですが、当時13、14歳だった少女が無理やり結婚させられると、地域のリーダーに助けを求めて逃げてきたことがありました。UNHCRはリーダーからの連絡を受けて、両親との仲裁に入ることになりました。

少女、両親、地域のリーダーたちを交えて会合が何度も行われました。そしてある日、彼女はついに「私は結婚なんてしたくない!」と、自分の口で、自分の気持ちを両親に伝えることができたんです。みんなが涙していました。そうして両親の理解を得ることができ、彼女は学校に通い続けることができています。

PSEAにおいては、難民と私たち人道支援に携わるスタッフとの信頼関係も重要です。

万が一、故郷を追われた人たちが、難民認定や支援物資、安全な場所への避難と引き換えに性的な要求を迫られたら、それは言うまでもなく間違ったことです。これを彼ら自身がしっかりと知る必要があり、自分自身の権利を認識し、通報する手段を知る必要があります。そうすれば、UNHCRとしても、適切な支援を適切なタイミングで行うことができます。

通報の多くは女性や少女に関することが多いのですが、同性愛者、ゲイ、両性愛者、性転換者への働きかけもしています。そして、男性や少年への性的虐待も大きな課題です。「男は泣いてはいけない」という文化的背景がある国も多く、被害の実態がなかなか表に出てこないからです。

でも、私たちは立ち止まっていられません。大きな壁が立ちはだかり、一日では越えられなくても、努力と成果を積み重ね、現状を変えていかなければならないのです。

 

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