第40号 (XXXVI) -1985- 自主帰還 *1

執行委員会は、

国際法の基本的原則および実行を反映している、自主帰還に関する1980年の結論の重要性を再確認し、当該問題について、さらに、次の結論を採択した。

  1. 人はその出身国に自主的に帰還する基本的権利を有することを再確認し、国際協力がこの解決策の達成に向けて行われ、一層推進されるべきことを要請する。
  2. 難民の帰還は、もっぱら自由に表明された意思にもとづいて行われるべきである。難民の帰還の自主的および個別的性格、ならびに、帰還が絶対的に安全な条件のもとで、なるべく難民の出身国の居住地に向けて行われる必要性は、常に尊重されるべきである。
  3. 原因の局面は問題の解決にあたって決定的なことであり、国際的な営為もまた難民の移動の原因を取り除くことに向けられるべきである。国際社会、特に国際連合において現在続けられている活動の調整を含め、難民の移動の原因および防止に一層の考慮が払われるべきである。難民の流出を防止するのに不可欠な条件は、難民の移動の根源にある原因に対処する直接関係国の十分な政治的意思である。
  4. 自国民に対する国家の責任および自主帰還を促進する他の国家の義務は、国際社会によって支持されなければならない。自主帰還のための国際的行動は、普遍的レベルであると地域的レベルであるとを問わず、直接に関係するすべての国家の全面的な支持および協力を受けるべきである。難民問題の解決策としての自主帰還の促進は、当該解決策に資する条件を創出する直接関係国の政治的意思を同様に必要とする。これは、国家の第一義的責任である。
  5. 高等弁務官の既存の任務は、自主帰還に向けてイニシアチブをとり、すべての主要当事者間の対話を促進し、当事者間の意思疎通を促し、および仲介人もしくは意思疎通の媒介者として行動することにより、自主帰還を促進するのに十分なものである。可能なときはいつでも高等弁務官がすべての主要当事者と連絡を取り、その見解を把握することが重要である。高等弁務官は、難民状況が発生した当初から常に、当該難民集団のすべてまたは一部が自主帰還する可能性を検討し、全般的情勢が適当と判断したときにはいつでも自主帰還の促進に積極的に従事すべきである。
  6. 高等弁務官の人道的関心は、すべての当事者によって認められ、尊重されるべきであり、高等弁務官は難民に対して国際的保護を与え、難民問題の解決を求める人道的任務を遂行する活動に対し全面的な支持を受けるべきである。
  7. 高等弁務官は、あらゆる場合において当初から自主帰還の実行可能性の評価およびその後は帰還計画の策定および実施の双方の段階に全面的に関与すべきである。
  8. 出身国への自主帰還の重要性を認める。組織化された自主帰還を促進する行動は、難民の自発的な帰還への障害を生み出すものとはみなされない。利害関係国は、難民の利益と思料されるときには常に、自主帰還を奨励するため出身国における援助の提供を含むあらゆる努力をすべきである。
  9. 高等弁務官は、特定の難民集団の自主帰還の促進に重大な問題が存すると判断するとき、当該問題に取り組む非公式のアド・ホック協議グループの設置について検討することができる。当該グループは、執行委員会議長および議長団のその他の構成員と協議の上で、高等弁務官が任命する。当該グループには原則として直接の関係国を含めるべきだが、必要な場合には、執行委員会の構成員でない国家を含めることもできる。高等弁務官は、権限のある他の国連機関に援助を求めることを検討することもできる。
  10. 三者構成の委員会は、自主帰還を促進するのに非常に良く適している。出身国、庇護国およびUNHCRから成る三者構成の委員会は、帰還計画の共同立案および実施の双方に関与することができる。当該委員会は、その後に生じる問題に関する主要当事者間の協議を保障する効果的な手段でもある。
  11. 自主帰還を促進する国際的行動には、受入れ国のみならず出身国の状況の検討が必要である。出身国において国際社会が提供する帰還者の再統合のための支援は、帰還を促進する重要な要因と認められる。この目的のために、UNHCRおよび他の適当な国連機関は、 出身国における統合および社会復帰の様々な段階において帰還者を支援するため、即時に利用できる基金を有するべきである。
  12. 高等弁務官は、帰還の結果について正当な関心を有していると認められるべきである。当該帰還が恩赦またはその他の形態の保証の結果として実現した場合には、特にそうである。高等弁務官は、支援したいずれの帰還の結果についても正当な関心を主張する権利を有しているとみなされなくてはならない。高等弁務官は、関係国との緊密な協議の枠組みのなかで、難民の帰還の基礎となった恩赦、保証または約束の遵守を監視できるよう、帰還者と直接に、妨害なく接触する機会を与えられるべきである。これは、高等弁務官の任務に固有のものとみなされるべきである。
  13. 自主帰還に関する既存のあらゆる原則およびガイドラインを反映した、国際社会全体によって受入れられる文書の作成についてさらに考慮が払われるべきである。

*1国連総会文書No.12A(A/40/12/Add.1)に含まれている。