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UNHCR:資金難により、難民への暴力、危険、命のリスク高まる

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UNHCR:資金難により、難民への暴力、危険、命のリスク高まる

2025年5月6日
Sudan

暴力から逃れダルフールからチャドの国境に避難してきたスーダン難民

昨今の深刻な予算削減により、世界で最も脆弱な立場にある難民への必要な支援が減少し、虐待や貧困、危険な強制的な帰還、新たなる危険な移動に直面するリスクが高まっているとUNHCRは警告しています。

難民の3分の2は安全を求めて周辺国に避難していますが、その多くはすでにリソースが不足している国々です。こうした国々に対する支援の予算が削減されることで、すでに限界に達している難民や受け入れコミュニティに深刻な影響を与えています。UNHCRは、脆弱な受け入れ国の人々の安定を支えるために行ってきた活動の多くは、規模を縮小せざるを得なくなったり、停止に追い込まれたりしていると警告しています。長期的な解決策の見通しも遠のいており、国境管理の複雑化や人身売買・虐待のリスク増加につながっています。今後さらに多くの人々が危険な旅を選ばざるを得なくなり、海で命を落とす人も増えるかもしれません。

慢性的な資金不足は、これまでも課題でした。スーダン、南スーダン、ミャンマー、コンゴ民主共和国の難民への対応は、今回の予算削減以前から厳しい状況に置かれていました。特に、性に基づく暴力の防止に向けた活動では、2024年は6つの地域難民対応計画に対して、必要な資金のわずか38%しか確保できませんでした。この結果、多くの難民が法的支援や医療、経済的支援にアクセスできず、危害や搾取、虐待に対して、より一層、脆弱な状態に追い込まれています。

現在、1,740万人以上の難民の子どもたちが、暴力や虐待、人身売買、家族との離別の深刻なリスクにさらされています。子どもを保護するタイムリーで質の高い支援がなければ、心身の健康や成長に長期的な影響を及ぼすおそれがあります。さらに、虐待や児童婚、武装集団による徴用といった危険にも引き続き直面しています。


<事例>

  • 南スーダンでは、UNHCRが支援する女性・少女のためのスペースのうち、75%がサービスを提供できていません。医療、法的・経済的な支援を受けられない、レイプや暴力の被害者は8万人にのぼります。
  • アフリカ東部(アフリカの角・大湖地域)では、保護者のいない子どもを含む約100万人の脆弱な子どもたちの虐待や搾取のリスクが高まっています。
  • ヨルダンでは、特別な支援を行っていた63の人道支援プログラムが終了したことで、脆弱な女性や子ども20万人が必要な支援を受けられなくなっています。
  • ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、チャド、カメルーン、マリ、ナイジェリアでは、女性に対する暴力を防ぐための支援プログラムが終了し、暴力やレイプの被害を受けた女性たちに深刻な影響が出ています。
  • アンゴラ、モザンビーク、ザンビアでは、性に基づく暴力のサバイバーを支援するプログラムが縮小または停止され、脆弱な立場にある女性や子どもたちが、心のケアや法的支援、安全な場所へのアクセスを失いました。マラウイでは、各種サービスの削減により、保護者のいない子どもたちの把握や支援が難しくなっています。
  • マリでは、1万9,800人の庇護希望者に対する生体認証が中断され、法的な認定を受けられず、仕事や公的サービスへのアクセスができない状況が続いています。

さらに、コミュニティでの支援プログラムや現地パートナー団体への予算も削減され、UNHCRの各地のネットワークに影響が出ています。これは特に、緊急事態での保護活動の実施能力に大きく関わります。バングラデシュでは、女性のリーダーシップや安全確保を目的としたプログラムが一部中断され、10の女性主導のコミュニティセンターが閉鎖し、10万9,000人の難民と3万2,000人の地域住民が影響を受けています。

コンゴ民主共和国では、辺境の難民受け入れ地域でのUNHCRの出生登録支援が大幅に削減となり、中央アフリカ、南スーダンからの難民の4歳未満の子ども1万4,000人の85%以上が無国籍のリスクにさらされています。

アフリカの角と大湖地域では、故郷を追われた85万人が、必要な法的支援を受けられない状況にあります。コロンビアでは、50万人以上のベネズエラ人に対する証明書の発行が危機にさらされています。身分を証明する手段がなければ、定住や医療、教育、雇用などへのアクセスが困難となり、脆弱性は一層深まります。

また、危険な状況下での帰還を強いられる難民もいれば、自主帰還を控えている難民がその機会を奪われています。たとえば、中央アフリカからチャドとカメルーンに逃れ帰還を希望している1万2,000人の難民は、そのための支援がなく取り残された状態です。

UNHCRは75年にわたり、難民の保護や解決策の提示を通じて、安定と希望をもたらす重要な役割を担ってきました。UNHCRはその専門性を生かし、複雑な政治・治安・社会経済におけるの課題に対処しながら、故郷を追われた人々の命と権利を守る支援を行ってきました。権利を守ることは、強制移動の防止や、その根本的な原因への対応、そして解決策の実現にもつながります。

私たちに必要なのは、国際的に連帯し、支援を必要とする人々への責任を共有することを認識し、誰一人取り残さない社会の実現に向けて行動することです。一人ひとりの支援が、確かな変化を生み出します。命を救い、尊厳を守り、すべてを失った人々に希望を届けることができます。難民を守り、支えるために、私たち一人ひとりができることから始めましょう。UNHCRがその重要な使命を果たし続け、すべての難民が必要な支援を受けられるよう、共に力を合わせていきましょう。何千万もの命がその行動にかかっています。

 

▶原文(英語)はこちら