日本企業とともにつなぐ~メキシコに逃れてきた難民の新たな一歩
日本企業とともにつなぐ~メキシコに逃れてきた難民の新たな一歩
ハイチから避難した後、UNHCRなどの支援を受けてメキシコの日系企業で働く機会を得た難民
中南米の経済・産業の中心の一つであるメキシコ。暴力や迫害から逃れ、より安全な場所を求めて、ベネズエラやホンジュラスなど南米の国々から、この地にたどり着く人々がいます。
そして近年、メキシコは、アメリカへ向かう“通過国”から、新たな生活を始める“目的地”へと変わりつつあります。2025年には7万件を超える庇護申請が行われ、女性や子どもなど、より脆弱な立場にある人も多く含まれています。
メキシコで安全に暮らし、未来を築いていくためには、住居や教育、保健医療へのアクセスに加え、安定した仕事を得ることが重要です。住まいを確保し、子どもを学校へ通わせ、地域で新たな生活を築いていくための土台となるからです。
そんな難民の新たな一歩を支える担い手となっているのが日本企業です。メキシコ中部のアグアスカリエンテスなど、自動車・製造業が集積するバヒオ地域で、官民連携による取り組みが広がっています。
雇用機会と難民をつなぐ難民定住プログラム
UNHCRはメキシコで、難民を保護し、仕事の機会の多い都市へとつなぐ難民定住プログラムを実施しています。メキシコ政府、自治体、市民社会、民間企業と連携し、2016年からこれまでに5万4,000人以上が10都市で新たな生活をスタートしました。
就労支援だけではありません。一時滞在先や定住先の住居探し、子どもの就学、法的手続き、家族再統合、金融・公共サービスまで、日々の生活に必要な支援を包括的に提供しています。仕事を得ることをゴールとせず、その先の生活の安定と地域への定着を支えているのです。
2025年から2026年には、日本の支援を通じて、5,000人以上に社会経済的統合に向けた支援を、8,000人以上に法的な支援を提供しました。文化やスポーツ活動を通じて、難民と受け入れコミュニティの人々が交流する機会づくりにも貢献しています。
日本企業が生み出す新たな可能性
メキシコでは約1,600社の日系企業が事業を展開し、その多くがバヒオ地域やメキシコシティに集中しています。人材を必要としている企業と、自立に向けて安全で安定した仕事を求めている難民――。UNHCRは双方のニーズをつないでいます。
昨年には新たに14社の日系企業が、UNHCRがさまざまなパートナーと連携して推進する難民就労支援に参加し、この約2年で25社の日系企業による210人以上の難民雇用につながりました。こうした取り組みは、難民が地域の人々とともに働き、生計を立てながら地域社会の一員として生活していくことを支えています。
エルサルバドルから2人の子どもと逃れてきたシルビアさんは、暴力を逃れてメキシコに到着した後、難民認定を受けて、中西部のアグアスカリエンテスへ移り、日本製鉄グループで働き始めました。「収入だけでなく、自分の力で家族を支える自信、周囲とのつながり、そして将来への希望を取り戻すことができました」。安定した仕事を得て、シルビアさんは家族の生活を立て直し、子どもたちの将来について考えられるようになったといいます。
企業の関わり方は、採用だけではありません。就職フェアへの参加、職場での受け入れ体制の整備などさまざまです。自動車部品の日系企業「EXEDY DYNAX Mexico」では、育児や介護と仕事を両立しやすい柔軟な勤務制度を導入。難民女性だけでなく、さまざまな事情を抱える従業員が働き続けられる職場づくりにもつながっています。さらに、難民の背景を持つ従業員とともに地域のサッカートーナメントに参加するなど、雇用をこえたコミュニティとの交流も広がっています。
UNHCRが現地自治体と連携し、難民の就労機会を広げるために開催した就職フェア
官民連携が生む持続可能な仕組み
一連の取り組みを支えているのが、日本の支援を通じて進められている官民連携です。さまざまなパートナーが連携し、難民の雇用を地域全体で支える仕組みを築いています。
こうした現場で、国際協力機構(JICA)海外協力隊経験者の国連ボランティアとして、難民の社会統合と自立支援を担当するUNHCRメキシコの村田陽子は、「先日、日本企業に採用された難民の方から、『皆さんのおかげで、メキシコで前に進んでいくために必要な尊厳ある仕事を得ることができた』という言葉をいただきました。日本企業が難民の雇用を通じて、一人ひとりが地域社会の一員として新たな生活を築いていく機会を提供してくださっていることを、大変うれしく感じています」と話します。
仕事を得ることで、自立への一歩を踏み出している難民たち。必要な人材との出会いを力に成長する企業、そして、より多様で包摂的な地域社会へ――。メキシコで進むこの取り組みは、日本企業が難民の尊厳と自立を支え、地域の安定と発展にも貢献する実践的なモデルとなっています。
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