【シンポジウムレポート】 シリア危機:日本の人道支援 ‐いま私たちにできること‐
【シンポジウムレポート】 シリア危機:日本の人道支援 ‐いま私たちにできること‐
2013年8月3日(土)、シリア人道危機を考えるシンポジウムが国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所と(特活)ジャパン・プラットフォーム(JPF)の共催で開催された。多くの学生を含む一般参加者をはじめ在京大使館、国会議員、日本政府関係者、NGO関係者ら300人を超す参加者を迎え、「今世紀最大の人道危機」といわれるシリア情勢を巡り活発な議論がおこなわれた。
シンポジウムでは木山啓子ジャパン・プラットフォーム代表理事の開会挨拶に続き、鈴木俊一外務副大臣、小池百合子衆議院議員が来賓として挨拶。鈴木副大臣からは、今年5月の自身のシリア難民キャンプ視察(ザータリ・ヨルダン)を始め日本政府の数々の支援の動きに触れつつ、本シンポジウムが「日本として何ができるのか」を改めて見直す貴重な機会となるよう期待が寄せられた。また、今年3月に発足したシリア難民支援国会議員連盟の会長を務める小池議員は、ザータリ難民キャンプ訪問時に出会った日本の青年たちの活躍の姿を賞賛、国会としても日本の技術を活かした水・環境分野での貢献など日本ならではの様々な支援を国会の場から一層後押しする決意が述べられた。
基調講演では、黒木英充東京外国語大学教授が登壇。「シリア危機の背景」と題し、シリア国内の農村部と都市部を巡る歴史的な構図についての考察が行われ、また国際的視点から周辺諸国や欧米各国による対シリア介入のもたらす影響などについての指摘が行われた。続いてヨハン・セルスUNHCR駐日代表は 、2011年3月以来180万人以上のシリア難民が周辺国に避難している事態、さらに困難を極めるシリア国内での人道支援の現状を最新の情報をもとに報告。「シリア内戦は、疑いもなく地域や世界の平和と安定を脅かす危機であり、ここ数年で直面したことのない最悪の人道危機」であるとし、特に難民受け入れを積極的に続ける周辺国に対する日本を含む国際社会の支援強化の重要性を訴えた。
続いて行われたパネルディスカッションでは、モデレーターに 嘉治美佐子東京大学教授を迎え、 「現場からの報告 / 日本の人道的役割 – いま私たちにできること」と題して、実務家を中心に活発な議論が展開された。冒頭、シリア周辺国で難民支援事業に取り組むNGOの中から深川啓(ピースウインズ・ジャパン)、佐々木弘志(ジェン)、宮脇麻奈(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)、景平義文(AAR Japan [難民を助ける会])の四氏が登壇、自身の駐在経験などを踏まえ難民や受け入れコミュニティに対する人道支援の実情について詳しい報告を行い、遠く離れた日本だからこそ求められる人道支援の意義について訴えた。
続いて、ムハンマド・ディーブ駐日レバノン共和国大使館特命全権大使は、難民受け入れを大規模に続けるレバノン政府の視点から、シリア危機の現状について洞察、さらに日本から寄せられる支援についてあらためて感謝の言葉が述べられた。長岡寛介イラク大使館参事官(前外務省中東アフリカ局中東第一課長)は、日本政府による人道的・財政的支援のありかたについて、「包括的でスピード感を持った対応を創造的に行う姿勢」を強調、今後もシンポジウム参加者をはじめNGO,民間企業など様々なアクターとの連携を通じて、シリア情勢への貢献を続けることの重要性が指摘された。続いて折居徳正日本国際民間協力会(NICCO) 事務局長はシリア支援におけるJPFの役割や強みを説明、メディアや政府・国会関係者への働きかけ、特に民間からの資金支援強化の重要性を訴えた。
続いて行われた質疑応答では、国際社会の政治的な解決の見通しが立たない中、シリア危機の解決に不可欠な地域の安定のためにJICAなどの開発援助が果たす役割が指摘されたほか、子供の教育や女性、高齢者の視点にたった支援強化を求める声が寄せられた。
*講演資料・発表内容