公益財団法人 笹川平和財団主催 シンポジウムレポート
公益財団法人 笹川平和財団主催 シンポジウムレポート
2月18日、笹川平和財団主催のシンポジウム「日本における難民受入の可能性と課題
―スウェーデンからの示唆―」が行われました。
スウェーデンは、年間約1900人の第三国定住の難民を受け入れています。「難民の保護」という共通の目的に向けて、日本とスウェーデン両国が互いの経験から学ぶものは何か?会場には150人を超える参加者が集まり熱気に包まれました。
シンポジウムの冒頭登壇したUNHCR駐日事務所副代表の小尾は、「国際社会から日本への期待」というテーマでUNHCRの難民保護の取り組み、近年難民保護が直面する課題について説明しました。さらに日本の第三国定住プログラムとその国際保護上の意義についても触れ、日本の第三国定住プログラムは「人間の安全保障」を具現化する取り組みであると述べました。
小尾尚子
UNHCR駐日事務所副代表
続いて中村内閣官房副長官補室内閣参事官は「日本の第三国定住の取り組み」がどのように行われているのか、難民に対して行われる研修内容や期間なども含めた受け入れスキームについて、具体的な説明を行いました。
次に登壇したのはスウェーデン移民庁難民認定局副局長定住課長のオスカー・エクブラッド
さん。「スウェーデンの難民受け入れの理念と政策」について説明しました。
オスカーさんは、「第三国定住は難民キャンプで絶望のなか生きている人に希望を与える選択肢の一つであると信じています。人を守る喜びが日本でも皆に伝わり、共有できたらすばらしいことです。難民の保護は喜びの気持ちを持って初めて出来ることだと思います。」と力強く語りました。
また「私達は試行錯誤しながら第三国定住をすすめて来ました。うまくいかなかった経験も数多くあります。でも失敗を恐れず、むしろそれを糧にし、学びながらより良いものにしていけたら良いと思います。急いで結果を求めず、次世代までも視野に入れてゆっくり見守る姿勢も大切ではないでしょうか。」と、呼びかけた場面が印象的でした。
オスカー・エクブラッド
スウェーデン移民庁難民認定局
副局長定住課長
スウェーデンの政策レベルの話の後は、受け入れを実際におこなっている自治体レベルの取り組みについてスウェーデン・ユースダール市難民定住局長のケネス・フォセルさんが説明しました。
毎年50~70人の難民を自治体として受け入れているユースダール市では、就労や言語習得の支援に加え、定期的にスウェーデン文化を学ぶ時間を提供しています。また地域での定住をスムーズにするため、ケースワーカー、通訳、すでに定住している難民などで構成された「ローカルチーム」がきめ細かいケアを行っています。
ケネスさんは「専門的な支援を行う土台として、人としての信頼関係を築くことを大切にしています。受け入れた難民とはよく一緒に食事をするんです。食べながら様々なことを語り合う中で、初めて見えてくることがあります。スウェーデンの文化や言語を一方的に教えるのではなく、受け入れた難民の文化、言語などを私達が積極的に聞いて知ることで、より個々人に即した支援へとつなげられると考えています。」と語りました。
ケネス・フォセル
スウェーデン・ユースダール市難民定住局長
その後のディスカッションと質疑応答では・・
「スウェーデンの政策から日本が学べることは何か。」
「統計化しやすい難民の就業率だけが第三国定住の‘成功’の基準ではないはずだ。」
「障害を持つ人をスウェーデンではどのように受け入れ、支援しているのか。」
「難民自身が持つスキルや適性を、受け入れ国でも生かせると良いのでは。」
「一度受け入れた自治体から他の自治体への移動はどのように支援しているのか。」など様々な質問が出て、活発な議論が行われました。
スウェーデンと日本。社会制度の違いはありますが「難民の保護」という一つの目的を共有し、互いに学び合うことの出来た貴重な時間でした。
<シンポジウム概要>
「日本における難民受入の可能性と課題−スウェーデンからの示唆ー」
日時:2013年2月18日(月) 15:30〜18:00
場所:日本財団ビル
開会挨拶 茶野順子氏 笹川平和財団常務理事
来賓挨拶 小尾 尚子 UNHCR駐日事務所副代表
講演 中村氏(内閣官房副長官補室内閣参事官)
「日本の第三国定住の取り組み」
講演 オスカー・エクブラッド氏
スウェーデン移民庁難民認定局副局長定住課長
「スウェーデンの難民受入の理念と政策」
講演 ケネス・フォセル氏
スウェーデン・ユースダール市難民定住局長
「ユースダール市での取り組みと課題」
パネル・ディスカッション
【モデレータ】可部 州彦氏 明治学院大学教養教育センター講師
パネリスト】
・オスカー・エクブラッド氏
・ケネス・フォセル氏
・吉崎 美穂氏 鈴鹿市市民対話課外国人交流室長
・明石 純一氏 筑波大学大学院人文社会科学研究科助教
質疑応答
閉会