第22号 (XXXII) -1981- 大量流入の事態における庇護希望者の保護 *1

執行委員会は、
1981年4月21日から24日にかけてジュネーブにおいて会合した大量流入の事態における一時避難に関する専門家グループの報告に高い評価をもって留意し、大量流入の事態における庇護希望者の保護に関する次の結論を採択した。

I . 一般

  1. 難民問題は、世界の様々な地域とりわけ発展途上国において大量流入の事態が増加したことにより特に深刻化した。当該大量流入を形成している庇護希望者には、難民の地位に関する1951年の国連条約および67年の議定書の意味における難民、または外部からの侵略、占領、外国による支配、出身国もしくは国籍国の一部もしくは全部における公の秩序を著しく乱す出来事のため当該国の外に避難を求めることを余儀なくされた者が含まれる。
  2. 当該大量流入の事態を形成している庇護希望者は、自主帰還、避難国での定住または第三国への再定住により恒久的解決を見出すにあたりしばしば困難に直面している。大量流入はしばしば国家にとって深刻な問題を生み出すため、一定の国家は、恒久的解決の実現への言質を与えているにもかかわらず、入国の時点において自国における恒久的定住を約束せずに庇護希望者の入国を認めることしかできなかった。
  3. したがって、大量流入の事態において庇護希望者が十分に保護されることを確保すること、恒久的解決の手はずがなされるまでの間における最低限の処遇基準を再確認すること、ならびに、国際的連帯および負担配分の文脈において大量の庇護希望者を受け入れている国を援助するための効果的な手はずを行うことが肝要である。

II . 保護措置

A. 入国およびノン・ルフールマン

  1. 大量流入の事態において庇護希望者は最初に避難を求めた国への入国を許可されるべきであり、当該国家は永続的に入国を許可できない場合でも常に少なくとも一時的に入国を許可し、以下に掲げる諸原則に従って保護を与えるべきである。庇護希望者は、人種、宗教、政治的意見、国籍、出身国または身体の障害による差別なく入国を許可されるべきである。
  2. ノン・ルフールマンの基本的原則(国境における入国拒否の禁止を含む。)は、あらゆる場合に厳正に遵守しなければならない。

B. 恒久的解決の手はずがなされるまで一時的に入国を許可された庇護希望者の待遇

  1. 1951年の難民の地位に関する国連条約第31条は、許可なく入国した難民であってその滞在がいまだに合法的なものとなっていない者の待遇に関する規定を含んでいる。しかしながら、当該条項で定められた基準は大量流入の事態における庇護希望者の待遇の必ずしもあらゆる側面に及んでいるわけではない。
  2. したがって、恒久的解決の手はずがなされるまでの間一時的に入国を許可された庇護希望者は、次の最低限の人道的基準に従って取扱われることが不可欠である。
    1. 庇護希望者は、滞在が不法であるとみなされることのみを理由として刑罰を科せられまたは不利な取扱いを受けるべきでなく、移動について公衆の健康および公の秩序のために必要な制限以外の制限を課せられるべきでない。
    2. 庇護希望者は、国際的に認められた基本的な市民的権利、特に世界人権宣言の定める諸権利を享受すべきである。
    3. 庇護希望者は、あらゆる必要な援助を受け、生活に基本的に必要なもの(食糧、住居、基本的な衛生および保健施設を含む。)を提供されるべきである。この点に関して、国際社会は国際的連帯および負担配分の原則に従うべきである。
    4. 庇護希望者は、その悲惨な窮状が特別の理解と思いやりを必要とする者として取扱われるべきである。庇護希望者が、残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いを受けることはあってはならない。
    5. 人種、宗教、政治的意見、国籍、出身国また身体の障害を理由とする差別があってはならない。
    6. 庇護希望者は、法の下で人として認められ、司法裁判所およびその他の権限のある行政機関を自由に利用することができる。
    7. 庇護希望者の居所は、その安全および福祉ならびに受入れ国の安全保障上の必要によって決定されるべきである。庇護希望者の居所は、できる限り、出身国の国境から相当な距離をおいて定められるべきである。庇護希望者は、出身国またはその他の国に対する破壊活動に関与すべきでない。
    8. 家族の一体性が尊重されるべきである。
    9. 親族を見つけるためあらゆる可能な援助が与えられるべきである。
    10. 未成年者および付き添われていない子どもを保護するため適切な措置がとられるべきである。
    11. 郵便物の発送および受領が許されるべきである。
    12. 友人または親族からの物質的援助が許可されるべきである。
    13. 可能な場合には、出生、死亡および婚姻の登録について適切な措置が取られるべきである。
    14. 庇護希望者は、満足のいく恒久的解決を得ることを可能にするためのあらゆる必要な便宜を与えられるべきである。
    15. 庇護希望者は、避難国の領域内に持ち込んだ資産を恒久的解決が得られた国へ移転することを許可されるべきである。
    16. 自主帰還を促進するためあらゆる措置がとられるべきである。

III . UNHCRとの協力

庇護希望者は、UNHCRに連絡する権利を有する。UNHCRは、庇護希望者と接触する機会を与えられる。UNHCRは、さらに、国際的保護の任務を遂行する責任を負い、レセプションセンターまたはその他の難民センターに入所している者の福祉を監督することを許されるものとする。

IV . 国際的連帯、負担配分および国家の義務

  1. 大量流入は一定の国家に不当に重い負担をかける場合がある。国際的な広がりおよび性質を有する問題の満足すべき解決は、国際協力なしには達成できない。各国は、国際的連帯および負担配分の枠組みの中で、大量流入の事態において庇護希望者の入国を許可した国家を、その要請に応じて援助するために必要なあらゆる措置をとるものとする。
  2. 当該措置は、場合に応じて、二国間でまたは地域的もしくは世界的レベルでの多国間で、かつUNHCRと協力してとられるべきである。地域内で適切な解決策を見出す可能性に第一義的考慮が払われるべきである。
  3. 負担配分のための行動は、場合に応じて、自主帰還を促進すること、受入れ国での現地定住を促進すること、第三国での再定住の可能性を与えることに向けられるべきである。
  4. 負担配分の取決めの文脈の中でとられる措置は、事態の特殊性に即したものであるべきである。当該措置は、必要に応じて、緊急援助、財政的および技術的援助、ならびに緊急の段階を過ぎて恒久的解決が見いだされるまでの間の更なる財政的またはその他の援助を事前に誓約しておく場合の援助の種類および追加を含む。自主帰還または現地での定住が実現できない場合には、庇護希望者の福祉に適合した文化的環境を有する再定住の可能性を提供すべきである。
  5. 既存のメカニズムを強化すること、ならびに、適当な場合には、必要な財政的、物質的および技術的援助を即時に提供することを確保するため、可能であれば永続的な基礎にもとづく新たな仕組みを設けることに考慮を払うべきである。
  6. 各国政府は、国際的連帯の精神にもとづいて、庇護希望者の大量流入をもたらす原因をできる限り速やかに除去すること、及び、大量流入が発生した場合には、自主帰還に有利な状況を確立することを確保するよう努めるべきである。

*1国連総会文書No.12A(A/36/12/Add.1)に含まれている。