第30号 (XXXIV) -1983- 明らかに理由がないかまたは濫用された 難民の地位もしくは庇護の申請の問題 *1

執行委員会は、

  1. 第28会期に採択された難民の地位に関する結論第8号(XXVIII)および第30会期に採択された庇護国のない難民に関する結論第15号(XXX)を想起し、
  2. 明らかに理由がないかまたは濫用された難民の地位の申請の問題に対処する措置の必要性を認める、第33会期に採択された結論第28号(XXXIII)を想起し、
  3. 関連する基準にもとづいて難民と認められる根拠を明らかに有しない者による難民の地位の申請が、1951年条約および1967年議定書の多くの締約国において深刻な問題になっていることに留意する。このような申請は、関係国にとって重荷であり、かつ、難民としての認定を求めるに十分な理由を有する申請者の利益を損なう。
  4. 難民としての地位を認定するための国内的手続は、通例、当該手続におけるいずれの段階においても十分な審査を行うに値しないほど明らかに理由がないとみなされる申請を迅速に処理するための特別の規定をおくことができると判断した。このような申請は、”明白な濫用”または”明らかに理由がない”と表現されており、明白な欺網か、または、難民の地位に関する1951年国連条約に定められた難民の地位を付与するための基準にも、庇護の付与を正当化するその他のいずれの基準にも関連しないものである。
  5. 難民の地位の申請が明らかに理由を欠いているかまたは濫用されているという決定の実質的性格、誤った認定が申請者にもたらす重大な帰結、したがって当該決定に適切な手続的保障が伴うべき必要性を認め、次のとおり勧告する。
    1. 難民の地位の認定および庇護の付与に関するあらゆる申請の場合と同じように、申請者には、十分な資格を有する係官による、および、可能な場合には常に難民の地位を認定する権限のある機関の係官による、完全な個別の事情聴取がなされるべきである。
    2. 申請が明らかに理由がないかまたは濫用されているという決定は、通常の場合に難民の地位を認定する権限のある機関によってなされるべきである。
    3. 申請を却下された者は、国境において入国を拒否されまたは領域から退去を強制される前に、当該決定の再審査を認められるべきである。政府は、当該再審査手続が不存在の場合には、その設置について好意的配慮を払うべきである。当該再審査手続は、明らかに理由がないかまたは濫用されているとは認められなかった申請が却下された場合に利用できる手続より簡略化することができる。
  6. 明らかに理由がないかまたは濫用された申請を処理する措置によって難民の地位を求める大量の申請にかかる一層大きな問題を解決することはできないものの、いずれの問題も、難民の地位を認定する手続を迅速化する次のような全般的な方法によって緩和されうることを認める。
    1. 難民の地位を認定する機関に十分な人材と物的資源を配置し、業務の迅速な遂行を可能にすること、および、
    2. 不服申立の処理に必要な期間を短縮する措置をとること。

*1国連総会文書No.12A(A/38/12/Add.1)に含まれている。