第73号(XLIV) -1993- 難民の保護および性暴力 *1

執行委員会は、

国際人権法および国際人道法において認められた身体の安全に対する基本的権利を侵害する性暴力が広範囲にわたって生じ、被害者、その家族およびコミュニティに重大な危害および損害を与えていること、ならびに、世界のいくつかの地域において強制的避難(難民の移動を含む。)が引き起こされていることに深刻な憂慮をもって留意し、

難民および庇護希望者(子どもを含む。)が、多くの事例において、避難の途中または庇護を求める国へ到着した後で、レイプまたはその他の形態の性暴力(最低限の生活必需品、個人証明書または難民としての地位の付与に関連した性的恐喝を含む。)を受けているという悲しむべき報告にも留意し、

性暴力を発見し、抑止しまたは救済するために具体的な行動をとり、庇護希望者および難民を効果的に保護する必要を認め、

さらに、性暴力の防止が、難民状況を含む強制的避難の回避および解決の促進に貢献し得ることを認め、

庇護希望者、難民および帰還民を性暴力から保護する上で、難民に、人権に、および人道法に関する国際文書の重要性を強調し、

女性の地位に関する委員会によって採択された「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言案」、ならびに、当該委員会、女性差別撤廃委員会、人権委員会、安全保障理事会およびその他の国連機関が性暴力を防止し、調査しおよび適切な場合にはその権限に従って処罰するために講じているその他の措置に留意し、

難民女性に関する結論第39号(XXXVI)、結論第54号(XXXIX)、結論第60号(XL)および結論第64号(XLI)を再確認し、

  1. 人権の重大な侵害、および、武力紛争に関連して行われた場合には人道法の重大な違反にあたるのみならず、人間の尊厳に対する特に深刻な犯罪でもある性暴力による迫害を強く非難し、
  2. 各国に対し、特に、国際的な法基準に適合した関連国内法令を執行することにより、および、性暴力を防止し、かつこれと闘う次のような具体的な措置をとることにより、その領域内にいるあらゆる個人の身体の安全に対する基本的権利を尊重しおよび確保するよう要求する。
    1. 法執行官および軍隊構成員があらゆる時点においてかつあらゆる状況下において身体の安全に対するすべての個人の権利(性暴力からの保護を含む。)を尊重することを促進するための研修計画の開発および実施、
    2. 効果的で無差別の法的救済措置(性的虐待に対する苦情の申立およびその調査の促進、犯罪実行者の訴追、ならびに、権力濫用による性暴力の場合における時機を得たかつ均衡のとれた懲罰措置を含む。)の実施、
    3. UNHCR、および、適切な場合には、関係政府によって承認されたその他の組織が、速やかにかつ障害なく、庇護希望者、難民および帰還民にアクセスできることを促進するための取決め、
    4. 難民女性と密接に協力して難民計画のすべての部門で難民女性の権利を促進する活動(「難民女性の保護に関する指針」の普及およびその実施を含む。)、
  3. 各国およびUNHCRに対し、女性および男性が難民の地位の認定手続ならびに移動の自由、福祉および市民的地位に関するあらゆる形態の個人証明書に等しくアクセスできることを確保し、難民男性だけでなく難民女性が、その自主帰還またはその他の恒久的解決策に関する決定に参加することを奨励するよう要請し、
  4. 人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由として、性暴力により迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖に基づき難民の地位の申請を行う者を難民として認めることを支持し、
  5. 難民女性がしばしば難民男性とは異なった迫害を経験する事実を認め、各国が女性である庇護希望者に関する適切な指針を作成するよう勧告し、
  6. 性暴力の被害を受けた難民およびその家族が、適切な医療および心理的、社会的ケア(文化的に適切なカウンセリングの提供を含む。)を与えられ、ならびに、援助および恒久的解決策の模索に当たり、一般に、各国およびUNHCRにとって特別の関心対象であるとみなされるよう勧告し、
  7. 性暴力の被害を受けた庇護希望者が、難民の地位を認定する手続において、特別の配慮をもって取扱われるよう勧告し、
  8. 難民計画(緊急活動を含む。)に女性の現地職員の存在を確保する重要性、および、難民女性による当該現地職員への直接のアクセスを確保する重要性を繰り返し述べ、
  9. この分野において権限を有するその他の政府間および非政府組織と調整して、政府機関(キャンプの係官、資格審査官、および、性暴力を防止し、これに対応する実際的保護措置をとるにあたって難民と接触するその他の係官を含む。)に対する研修コースを開発し、企画する高等弁務官の活動を支持し、
  10. 難民の地位を認定する手続に関与する者が、ジェンダーおよび文化の問題に適切な配慮を払うことを確保する研修計画を各国が設置するよう勧告し、
  11. 高等弁務官に対し、人権問題を扱う機関および組織と協力して、難民の権利ならびに難民である女性および女児の特殊なニーズおよび能力に関する認識を高め、「難民女性の保護に関する指針」の十分でかつ効果的な実施を促進する活動を積極的に遂行するよう奨励し、
  12. 高等弁務官に対し、「難民女性の保護に関する指針」の実施に関する今後の中間報告に性暴力の問題を含めるよう求め、
  13. 高等弁務官に対し、 「難民女性に対する性暴力の一定の側面に関する覚書」を、執行委員会文書として発行し、および、広く配布するよう要請する。

*1国連総会文書No.12A(A/48/12/Add.1)に含まれている。