第84号 (XLVIII) -1997- 難民児童および難民青少年に関する結論 *1

執行委員会は、

難民およびUNHCRにとって関心のあるその他の人々の大半は児童および青少年であることを認識し、

全ての難民児童および難民青少年の人権と尊厳を意識し、また、より広範囲の難民人口の中でも、これらの難民が特別な保護を必要とし、かつ脆弱な立場におかれているという理由で、難民がおかれるいかなる状況においても、保護や支援を受ける最初の対象の一つとなる必要があることに留意し、

難民児童および難民青少年が、引き続き家族離散、身体的暴力ないしその他の人権侵害(性的虐待や性的搾取による侵害を含む。)、および軍隊その他の武力による攻撃にさらされ続けていることに対して重大な憂慮をもっており、

難民児童および難民青少年の保護のための、ならびにその最大限の利益を促進するための法的枠組みになるという児童の権利条約(CRC)の根本的な重要性を想起し、

児童の権利条約がその前文で、児童はその人格の完全かつ調和のとれた発達のため、家庭環境のもとで幸福、愛情および理解のある雰囲気の中で成長すべきである、と謳っていることを想起し、

武力紛争が児童に与える衝撃に関する国連の調査(「マシェル研究」 “the Machel Study”)および武力紛争が児童に与える衝撃に関する国連事務総長特別代表の任命を歓迎し、

マシェル研究の後を継ぐUNHCRの計画に関心をもって留意し、難民児童および難民青少年に関する活動作業目標の設定を推賞し、

難民児童および難民青少年に関する結論第47号と第59号を再確認し、両結論の引き続いての正当性を強調し、かつ、

  1. 各国および関係当事者に対し、国際人権法および国際人道法に一致しており、かつ国際的な難民保護、特に難民児童および難民青少年を保護することに特別な関連のある諸権利および諸原則を、次の事項を含めて、尊重し順守するよう要請する。
    1. 児童の最大限の利益という原則および難民児童と難民青少年の保護および福祉に関わる社会の基本的集団としての家族の役割
    2. 生命、自由、身体の保全への、および拷問や残酷な、非人道的な、もしくは品性を傷つける処遇または処罰を免れることへの児童および青少年の基本的権利
    3. 教育、十分な食べ物および達成可能な限り高水準の健康をうける児童および青少年の権利
    4. 難民児童が武力紛争に関わる傷害、搾取および死の危険にさらされざるを得ないという特別に弱い立場に有ることを考慮して、武力紛争によって影響を受ける児童が特別な保護および処遇を受ける権利
    5. 児童を害するような伝統的習慣、その他のいかなる搾取からも保護される児童の権利
  2. 各国および関係当事者に対し、難民児童および難民青少年を保護するために可能な限りの措置を執るよう強く促す。とりわけ以下の方策によるものとする。
    1. 難民児童および難民青少年の家族からの離散を防止し、家族のいない未成年者の介護、保護、家族探しおよび家族との再統合を促進すること
    2. 難民児童および難民青少年の身体的保全を保護し、出身国の国境から相応の距離にある所に難民キャンプおよび居留地の場所を確保し、かつ難民キャンプおよび居留地の非軍事的性格および人道性を保持するための措置を執ること
    3. 性的暴力、性的搾取、性的売買および性的虐待を防止し、適切な法的救済措置および更正救済措置を講じることによって犠牲者である児童および青少年が必要とすること、およびその権利に対処し、1996年のストックホルムにおける児童の性的搾取に関する世界会議の行動計画をさらに追求すること
    4. 児童および青少年が本来享有すべき人権と人道的保護に関して、軍事要員や平和維持活動要員に適切な教育を行い、難民発生状況の中でのこのような権利および保護の侵害について全ての当事者に責任を負わせること
    5. 教育を受ける機会ならびに思想、良心および信教の自由についての児童の権利を保障すること
    6. 難民児童および難民青少年、特に家族のいないもの、あるいは孤児であるものの社会復帰を進めるため、医療あるいは、リハビリテーションを含むその他の特別な介護を提供すること
  3. UNHCRに対して、その政策や計画の中に児童の権利を十分に盛り込むよう要請し、難民児童および難民青少年が必要とする事項を査定するための実施方法を改善し、UNHCR職員を研修し、また必要に応じて実施協力機関をも研修し、予防戦略を作成し、各国、国連児童基金、世界食糧計画、国連人権高等弁務官事務所、国際赤十字、非政府組織や他の関係団体との協力を強化し、
  4. UNHCRに対して、1998年の常設委員会の作業計画の中に、マシェル研究を引き継ぐUNHCRの方策実施に関する報告を含めるよう要請する。その報告の作成にあたっては、難民児童および難民青少年に関する活動実施目標の設定、ならびにその目標の達成に必要な職員の配置、研修および予算の面での改善に、特に言及するものとする。また、難民児童および難民青少年のため、UNHCRの計画作りおよび保護活動の成果に対する評価の追跡的吟味に関して報告するよう要請する。
  5. また、全ての国に対し、武力紛争に巻き込まれる児童に関する児童の権利条約付属選択議定書に関する交渉に、その案文についての早期合意を目指して積極的に参加するよう要請する。

*1国連総会文書No.12A(A/52/12/Add.1)に含まれている。