“帰還”を“再建”へとつなぐ~国際社会が支えるシリアの再出発
“帰還”を“再建”へとつなぐ~国際社会が支えるシリアの再出発
約11年にわたる避難生活を経て、ヨルダンからシリア南西部の自宅に戻ったナーイフさん。変わり果てた自宅の姿にショックを受けたという
中東シリアでは、2011年から10年以上にわたり紛争が続いてきました。日常を一変させた、先の見えない争いのなか、住み慣れた故郷を追われ、国内外で避難生活を余儀なくされた人は数百万人にのぼります。
いつ故郷に戻れるのか分からない――。そんな思いを抱きながら、多くの人々が長い年月を過ごしてきました。
そんなシリアがいま、大きな転換期を迎えています。2024年12月の政変以降、依然として状況は流動的ではあるものの、長く続いた避難生活を終え、“故郷に戻る”という選択肢を考える人も出てきています。実際に、2024年末以降、国内外からシリアに帰還した人は300万人を超えています。
故郷に戻ることは、決してゴールではありません。長年の紛争を経て、人々が戻ることを願い続けた “故郷”の姿が、必ずしもそこに残っていないという現実もあります。住まいやインフラが破壊され、公共サービスが十分に機能せず、行政機関も脆弱な状況が続いている地域も少なくありません。
かつての故郷で、生活を立て直し、生計を取り戻し、地域社会とのつながりを再び築いていく。そのためには、日々の暮らしを支える生活の基盤を取り戻していくことが必要です。
2025年1月、シリア南西部ダルアー県の自宅の前にナーイフさん(65)は立っていました。8人の子どもの父であるナーイフさんは、家族とともに紛争を逃れ隣国のヨルダンで約11年にわたって避難生活を送っていましたが、2024年12月の政変を受けて、故郷に戻ることを決断したのです。
やっと故郷での生活を取り戻せる――。しかし待っていたのは、大きく損壊したかつての住まいでした。まずは家族が安心して暮らせるよう、自宅の修復から始めたといいます。
長年の避難生活を経て故郷へ戻った人々に必要なものは、住まいだけではありません。子どもの教育、医療サービスへのアクセス、土地や家の権利の確認・・・。こうした一つひとつにつながっていくのが、公的な書類や行政サービスです。
そこでUNHCRは、帰還した人々の安定した生活を支える基盤づくりのために、帰還が進むシリアで公的な書類発行のための環境整備を進めています。たとえば、出生証明書や身分証明書、土地・財産に関する書類。これらは、子どもの就学や医療サービスの利用、婚姻や出生などの各種登録手続き、住居や土地の権利の回復にも欠かせません。
今年はその一環として、日本の支援を通じて、ダラア県、スウェイダ県、ダマスカス郊外県、デリゾール県の計16カ所で、住民登録、土地や財産の登記行う施設の整備を、首都ダマスカスでは出入国管理当局の整備を通じて、必要な行政サービスにアクセスできる環境の改善に取り組んでいます(くわしくはこちら)。
日本の支援で整備された登記所
こうした取り組みを通じて、一人ひとりが権利を取り戻し、必要なサービスへ再びアクセスできるようになれば、帰還してきた人々だけでなく、地域住民へのサービス提供能力が向上し、社会の安定にもつながることが期待されます。
シリアに帰還してくる人々の現状を目の当たりにしてきたUNHCRシリアの奥田暁仁は、次のように語ります。
「シリアの人々は、長年にわたる苦難を乗り越えながら、故郷での新たな生活を築こうと懸命に努力しています。たとえ支援が限られていても、それを力に変え、自らの手で未来を切りひらこうとする強さを持っています。日本からの支援は、そうした人々が再び希望を抱き、自立に向けた一歩を踏み出すための大きな支えとなっています」
UNHCRは行政サービスの復旧に加えて、帰還が進む地域での住宅修復の支援、地域に根ざした保護サービスの提供も行っており、ここでも日本の支援が貢献しています。こうした包括的な支援は、一人ひとりが日々を生き抜くだけでなく、自分の未来を再建する後押しとなっています。
紛争下の緊急人道支援から、復興と安定に向けた支援へと移行しつつあるシリア。帰還は、長い避難生活の終わりであると同時に、新たな人生の始まりでもあります。
故郷へ戻ることが、より安全で希望に満ちた未来への第一歩となるように――。
日本を含む国際社会による持続的な連帯、そして支援が、帰還のその先にある、生活の再建と自立を支えています。
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