紛争や迫害により故郷を追われた人の命と尊厳を守り、一人ひとりの生活を支える—。国際社会で取り組むべき課題に対して、UNHCRは「難民に関するグローバル・コンパクト」で掲げられている“社会全体で取り組む難民支援”を推進しています。
そのうえで重要な役割を果たしている難民支援の担い手のひとつが自治体です。UNHCRは2018年にグローバルキャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」(英語名:Cities #WithRefugees)を立ち上げ、世界各地の自治体との連携強化を推進。2023年6月末時点で、世界55カ国・290の自治体が署名しています。
日本でも12の自治体がこのネットワークに参加しており、全国に難民支援の輪が広がっています。その一環としてUNHCRが開催しているのが、自治体を対象にしたセミナーです。日本各地の自治体や関連団体が集まり、世界の難民情勢、日本国内でのUNHCRの活動、自治体との連携事例などについて情報交換を行う場となっています。
昨年に続いて、この7月にオンラインで開催されたセミナーには全国から22自治体・11団体が参加。UNHCR駐日首席副代表のナッケン鯉都は「自治体の皆さんには、特にウクライナ危機をきっかけに、UNHCRの活動にさまざま形でご支援いただいており、まず感謝を伝えたい。今回のセミナーには、いつもお世話になっている自治体に加えて、初めての自治体からも参加がある。この場をきっかけに、自治体との連携をさらに深めていけたらうれしい」と話しました。
最初にUNHCR駐日事務所から「難民を支える自治体ネットワーク」の活動報告に加えて、今年12月末にスイス・ジュネーブで開催される「第2回グローバル難民フォーラム」についての紹介がありました。世界中の難民支援の担い手が一堂に会するこのフォーラムでは、今回は日本が共同議長国を務めることが決定しており、国際社会に日本の難民支援について広める絶好の機会です。
世界各地の自治体からも、すでに12月の開催に向けて、難民受け入れや啓発活動が「宣言」*として提出されていることを共有。日本の自治体からも積極的に参加してほしいと呼びかけました。
そして国連UNHCR協会からは、日本での自治体との連携事例として、「世界難民の日」のブルーライトアップ、難民映画祭パートナーズや写真展、参加型ワークショップ、国連難民支援キャンペーンなどについての紹介があり、それぞれの自治体の強みやリソースを生かした連携の大切さを訴えました。
続いて、2022年5月に「難民を支える自治体ネットワーク」に署名した瀬戸内市から、自治体として取り組んできた難民支援について発表がありました。瀬戸内市は、ウクライナ危機への寄付をきっかけに、「市民に難民問題について知ってもらうことで、多文化共生につながる多様な価値観につながる」と、市がリードして難民支援に取り組み始めたこと、まずは身近にできることとして、ふるさと納税のシステムを活用し、世界の難民支援をひとつの選択肢として提供するといった工夫をしていることなどが紹介されました。
質疑応答では、難民の定義や保護の手続き、日本での支援事例などにまで質問がおよび、UNHCR駐日事務所の法務担当から、世界の潮流を踏まえた日本の取り組みについての情報共有がありました。
最後に国連UNHCR協会の川合雅幸事務局長から、日本全国の大学による難民の学生の受け入れ、小中高での出張授業や募金活動、その他、商工会議所など地域のさまざまなアクターに難民支援の輪が広がっていることが共有され、自治体との連携をさらに広めて現場に支援を届けられるよう、力を尽くしていきたいと締めくくりました。
* 「グローバル難民フォーラム」では、各、政府機関、国際金融機関、民間企業、人道機関、開発機関、難民、市民社会などが実施中/計画中の長期的支援を「宣言」として提出。国際社会でさまざまな計画や事例を共有し合うことで、誰一人取り残さない社会の実現を目指します。くわしくはこちら。